法政大学大学院(水曜4時限)

法政大院(近代文学)来年度の教授陣

ボクは今年度で終わるけれど、来年度は吾が僚友・白百合女子大の高橋博史に代る。 中野重治を中心にプロレタリア文学の専門家ながら、かつて龍之介論で一書を出していたり(至文堂)、横光利一についても面白い論文があったネ。 むかし学芸大でボクが見切り…

佐藤春夫「美しき町」

今年度秋学期の最後の授業の発表は、センさんの「美しき町」論。 2年生のおテイちゃんほどヒドクはないけど、今回発表のおセンちゃんもなかなかタイヘンな人で心配。 12月のうちからこの作品では画期的な論文・疋田雅昭氏の学芸大学会講演レジュメを渡し…

打ち上げで痛飲、無事帰宅

大好きな娯楽番組「球辞苑」を見ながらなので、楽な話題を。 ちなみに今日のテーマは《カットボール》、去年阪神から西武に移籍して大活躍した榎田も、阪神の2軍時代にこの球種を覚えたお蔭で、西武で活躍できたとのこと(阪神ファンとしては何ノコッチャ!…

授業(教員)評価の是非  学生の意識も問われている!

法政大学から授業アンケートの結果報告が届いた。 教員と学生との関係は非対称の関係(教員が一方的に有利)だから、授業アンケートが始まった時は大賛成だった。 長年の間この非対称な関係にアグラをかいて平然としていたベテラン教員からは毛嫌いされてい…

9日は佐藤春夫  「陰翳礼讃」の感想(続き)

9日は佐藤春夫「美しき町」をセンさんが発表します。 最後の授業なので、TAとして大活躍してくれた関口クンと、ガンバッタ1年生の慰労のための打ち上げをする予定です。 前回のヤン君の「陰翳礼讃」論に対する感想の続きは以下の通りです。 ヤン君は谷崎の…

谷崎潤一郎「陰翳礼讃」

ヤン君はふだんの授業からして留学生のレベルを超える発言をしているけれど、発表でこそ真価が問われるので期待していたのは確か。 まだ大学院入学前だということなので、レジュメの書き方など基礎的な知識に欠けているものの、それ等は覚えれば済むことだか…

海野十三  谷崎潤一郎「陰翳礼讃」

いつもながら日本モダニズム研究という貴重なことをやっている杉本ユウキ君のお蔭で、初めて読む作家との出会いが楽しめる。 アテになる人なので、手許にありながら読みそうもない『吉行エイスケ作品集』とかいう本を上げ、研究に使ってもらうようにしたこと…

石川淳「明月珠」

創作科の日本人院生2人が息切れ気味で出席も覚束なくなっているので、先週は急遽、関口クンが「専門」にしている石川淳の短篇について発表してもらた。 明後日予定されている博士後期課程の中間発表のネタということなので、詳しい感想は明日の発表が終って…

太宰治「お伽草紙」  石川淳「名月珠」

「お伽草紙」から「カチカチ山」を取り上げたハンさんは、太宰研究に年季が入っているだけでなく、TAの関口クンにあらかじめチェックしてもらっていただけあって、留学生としてはまとまりのある発表だった。 しかし「お伽草紙」の中では「カチカチ山」だけが…

芥川龍之介「六の宮の姫君」  篠崎美生子

レポのリュウさんは文学専攻ではないとのことなので、文学研究の方法やレジュメの作り方がまだ身についていないのが明らかになったものの、来日して間もないとのことなので今後の発奮を期待したい。 日本語のレベルも自覚してアップしていかないと、修士論文…

田村俊子「女作者」  太宰の「カチカチ山」

前々回の感想を延ばしていたら、先週の感想も遅れてしまった。 センさんが田村俊子とは驚いたけれど、選び抜かれた作品を集めた岩波文庫の『日本近代短編小説選』(大正篇)に収録されていた中で気に入ったからとのこと。 この文庫アンソロジーは、明治から…

古山高麗雄「白い田圃」

ハチャメチャに面白いこの作品を、未読の人にどう伝えたらいいだろうか? 個人的に大好きな安岡章太郎(古山は「悪い仲間」の登場人物であるというのが2人の関係)の面白さとかなり近いかな。 定説のように言われる「劣等生の文学」=第三の新人に括られて…

田村俊子

トシをとると共に時間の経過が早くなるのは、誰でも自覚していることだろう。 この1週間は間に学会があったり、月に1度の病院の帰りに古書店2軒寄ったりして、脳が落ち着かないまま明日の授業案内を記し忘れていた。 ついでに今後の予定。 11月14日 …

谷崎潤一郎「「金色の死」  留学生とも思えない発表  古山高麗雄の「白い田圃」

安田淳平さん問題に追われ、授業の感想を記すのを忘れていた。 ヤン(楊)君の発表は留学生とは思えないレベルだったので驚いたけど、まだ大学院入学前なのにレジュメが11ページ超の長さなのだからビックリするしかない。 日本語能力もハイレベルなのでそ…

松本清張  谷崎潤一郎

「断碑」という考古学者をモデルにした作品で、前回発表した「菊枕」と同様にコンプレックスをバネに振り回される性格悲劇(ボクなりの規定)のパターンだ。 いつも言うとおり、清張の作品に文学性を感じないボクとしては論じようがないし、発表に対してもあ…

清岡卓行「サハロフ幻想」

順序が逆になってしまったけれど、前々回の清岡作品。 今ではほとんど読まれることもない印象の清岡作品を、留学生が研究するというのだから嬉しい、というか有り難い。 とはいえ発表者のワン(王)君が大連生まれと聞けば、清岡を選択した理由は分かりやす…

泉鏡花「縷紅新草」

修士論文に取り組んでいる最中の院生や・学会の仕事が重なってしまった院生はともかくも、研究のための知識を吸収したり・テクストの読み方を身につける修練を積み重ねなければならない時期の院生が、気軽に授業を忌避していては将来が期待できない。 目先の…

24日は清張、31日は潤一郎

10月24日は松本清張「断碑」(新潮文庫『或る「小倉日記」伝』などに収録) レポはテイさん 31日は谷崎潤一郎「金色の死」 レポはヤン(楊)クン @ 清張は三島由紀夫がまったく認めない作家だった一方で、「金色の死」は三島が絶賛した作品なので、三…

清岡卓行「サハロフ幻想」  泉鏡花「縷紅新草」  テクストの《読み》

参加者がいつもより少なめ、ケガのセンさんはともあれ、研究に臨む姿勢が消極的(セコイ)なせいでなければイイのだが。 清岡の小説(それもチョッと長め)からは得るものが少ないと決め込んで忌避したとすれば、とんだ思い違い。 課された作品が何であれ、…

太宰治「女生徒」

公房ファンの古平クンが太宰とは意外、でも「女生徒」なら小説作法として得る所が大かも。 ボクの昔の論(『シドク 漱石から太宰まで』所収)でもジョイスの「意識の流れ」を意識した可能性を指摘したけれど、太宰は「ユリシーズ」を読んでなくても耳学問で…

乱歩「押絵と旅する男」

ますますボケ進行が勢いを増したのか、授業記録を記すのを忘れていた。9月26日は秋学期の初日だったけれど、顔合わせだけで終るという無駄を省くために杉本クンに活躍してもらった。 日にちが経ったので細部の記憶は薄れているけど、立教院などでも取り上…

26日の予定

後期1回目の授業で前期とはメンバーが入れ替わるでしょうが、授業のオリエンテーションや自己紹介などだけでは時間がモッタイナイので、いつも通りの実質的な授業をやります。 江戸川乱歩「押絵と旅する男」 発表者は杉本クン、テキストは各自用意して下さ…

修論中間発表会  シベリア抑留体験を強いられた芸術家  「鏡子の家」  山田夏樹

25日は修論中間発表会だというので、去年と今年の授業受講者のものだけを聴きに行った。 最初は長谷川四郎論だというので去年のズムさんかと勘違いしていたら、ウズベキスタンの留学生ではあったものの別人だった(ズムさんにしては早く論ができ過ぎだもン…

石川淳「アルプスの少女」

石川淳は気になる作家、太宰治や高見順などと共に「昭和10年代の作家」として、あるいは「語りの作家」として括られているのが一因だろう。 とはいえ太宰や高見ほど好きではないのも確か、好きな作品を上げろと言われても困るのだから。 身近なところでは…

芥川龍之介「地獄変」  主人公と決めるのは読者  有光隆司  石川淳「アルプスの少女」

漱石もそうだが、今どき龍之介の作品で新見を出すのは並大抵のことではない。 レポの木島クンの意気込みは伝わってきたものの、文学研究ではまだ初歩的な段階なので大事なところでつまづいた。 語りが一人称である点を軽視し過ぎ、叙述を客観的なもので信じ…

三島由紀夫「志賀寺上人の恋」

明日4日は三島の「志賀寺上人の恋」です。 三島らしさがよく出ている作品ですが、「太平記」など古典との関連も興味深いです。 文庫では『岬にての物語』(新潮)に収録されています。

大江健三郎「奇妙な仕事」  テクスト・クリティック  カミュ「シジフォスの神話」

サッカー中継のせいか、感想が遅くなってしまった。 中国の留学生による大江の発表を聴くのは初めてだけど、チョウ君は大江をよく読み込んでいるという印象だった。 それに引き替え授業中にスマホをいじり続けていたので注意した留学生もいたのはザンネンだ…

佐藤春夫「西班牙犬の家」

立教大院の修了生で博論執筆中の栗田卓氏を、今年度初めてのゲストにお迎えした。 30数年間一貫して院の授業は外に向かって開き、外部からゲストを迎えてお互いの刺激にしてもらってきた(昨年度は2人)。 栗田氏はフェリス女学院大学などの授業でこの作…

漱石「倫敦塔」

留学生のコウ君が果敢にも漱石の読みにくい作品に挑んだ姿勢に敬意を表したい。 今どき日本人でも漱石研究にチャレンジする人が稀な中で、この姿勢は評価できるということだ。 しかし結果が思わしくないので、今後いっそう励んでステージを上げてもらいたい…

松本清張「菊枕」  3つの研究法

昨年の1年間、授業に集中できない「困ったさん」の[T]さんだったけど、聞けばそれなりの事情が無いわけでもなかった。 今年は授業態度がだいぶ改まったので期待はしたものの、授業時間が迫ってもレジュメ原稿を打ち続けていたので途中でもいいからすぐにプ…