一橋大学 大学院授業連絡

【学大の授業もそうですが、一橋大のこの授業は特に他大学の院生・学生に対しても開いており、関谷との関係で少なからぬ他大学からの参加者がいます。希望者は関谷まで。金曜2時40分〜5時半頃まで。
 一人の作家・詩人から3〜4作品を取り上げて、レポーターのレジュメを元に議論します。冬学期は安部公房から始まって、木山捷平、李良枝(イ・ヤンジュ)、田村隆一小林秀雄「近代絵画」などを予定しています。】

[授業予定]
10月2日 安部公房「探偵と彼」 レポは木村陽子(早大博士課程後期)
   9日 「棒になった男」第一章「鞄」 レポは渡辺と西村
  16日 「誘惑者」 レポはキム君とソンさん
  23日 李良枝「影絵の向こう」 レポは方(パン)さん
  30日    「あにごぜ」   レポは佐藤クン(プラス?)
11月6日    (休講)=学期末に補講
  13日 李良枝「青色の風」 レポは前回休んだリンサイ川瀬
11/20 木山捷平「骨さがし」 レポは石川サン
   27     「コレラ船」 レポはソン(宣)さん
12/4  休講(ヘルニア手術のため)
12/11     「かなかな」 レポは西村クン
12/18     「下駄の〜」 レポは斉藤・瀧ペア
01/08 田村隆一「言葉のない世界」 キム
01/15 (センター試験準備のために全学休講)
01/22     「田村隆一詩集」のプリント、特に「腐敗性物質」 
                 レポは黒岩博士(「博士」は名前ではない)
01/29 田村隆一「緑の思想」 レポは渡辺+関塚
02/12 (集中講義の日でした。授業無し。天満クンの小林秀雄セザンヌ
       論は来年度。)

 @ レポートは一人の作家について、30枚以上書くこと。
   締め切りは2月16日、関谷の自宅まで必着。


【授業内容】
* 2日はさすが安部公房の専門家、という感じのよくできた発表。表題もテクスト
  の一部だから、きちんと読みに組み込みましょう!
* 9日の「鞄」は西村クンのレジュメが光っていた。渡辺さんの読みはリアリズム
  演劇を読んでいるようで、違和感が残りました。公房作品を敢えてリアリズムと
  読むことで、新しい切り口が開けるなら面白いのですが、奇異な感じが残るだけ
  だとツマリマセヌ。やはりアレゴリー的な読みでないと、公房はオモシロク
  ナイ。
* 16日の「誘惑者」は意外にもレポが二人ともリアリズムで読まなかったので拍
  子抜け。専門家の木村(瀧)さんも同様で、リアリズムで読むヒトをイジメる楽
  しみが味わえなくて皆さんザンネンでした。今年の留学生はスゴイ!(?)
* 23日は李良枝。この小説家は基本的に私小説作家だと思いますが、その分だけ
  テクストの面白さを伝えうるかがレポに問われると思います。方さんの発表はま
  だまだその面白さを掘り当ててはない段階でした。次の佐藤クンと「あにごぜ」
  が李文学の面白さを伝えてくれればいいのですが。期待しましょう。
* 佐藤クンの「あにごぜ」論は、少し手を加えればそのまま全国区の研究誌に載
  るレベルのもので、聴きながら目が覚める思いでした。授業の発表を聴いてそ
  ういう思いになるのは珍しいことですが、かつて立教院での武智クンや本田ク
  ンの論、聖心女子大院では故人となってしまった北村ミッチャンの論などが思
  い出されます。もっとも驚かされたのは立教院時代の築山嬢の三島由紀
  夫「卵」論で、これについては何かに書いたナ。学大では坂東クンかな。
  ともあれ、佐藤クンにはシッカリまとめて早めに持ってくるように伝えました
  。佐藤論を読みたいヒトは、「あにごぜ」を読んだらお貸しします。
* 13日。レポであることを知ったのが2日前にしては、リンサイの発表は話題
  が提供できていて合格!でした。実力が着いていくのが目に見えるほど早いの
  でビックリ!
* 捷平がこんなにオモシロク読めるとは! ゼミのレベルが高いせいだけではな
  いと思う。やはり井伏もどきのテクストがオモシロイのだと思う。選んだ石川
  さん、アリガトウ! これからが楽しみ! 
* 27日。ソンさんは文学研究が専門ではないながら、真面目に出席しているの
  で感心してます。その真面目さがそのまま出たような発表で、語りの面白さを
  読み落としていたので、井伏を紹介しながらその点をかなり補足しました。次
  回に井伏の「炭坑地帯病院」あたりのプリントを皆さんに配布しようと考えて
  ます。「黒い雨」も深刻な素材を軽く語ろうと試みたテクストの代表です。
* 手術については「つぶやきイチロー」の欄を参照して下さい。
* 12月11日。西村クンは準備段階からテクストの論じにくさをボヤイていま
  したが、さすがに西村クンなりの読みで議論になる話題を提供できてました。
  この日は午前中から学大で仕事があり、一旦ウチに帰ってから昼寝した後に一
  橋へ行こうと考えていたのに、学大の仕事が長引いて寝る間もなく行ったら、
  案の定発表を聴いている中にイイ気持になってしまいました。申し訳ありませ
  んでした。気が付いたら皆が自分の方を見ていた、という経験は正規の授業で
  は初めての経験だと思います(ボランティアの自主ゼミではありますが)。
  それにしても木山捷平はオモシロイ!
* 18日はテクストがシモネタでレポの瀧さんが大はしゃぎ! もう一人のレポ
  のトオルちゃんの際どいレジュメと発言も受けましたが、二人とも木山捷平
  別の面に照明を当ててくれたようで、とても刺激的な一時でした。
* 上記の記述で、「瀧さんが大はしゃぎ」に対してご本人からいわゆる「厳重な
  抗議」がありました。お詫びして「瀧さんが小はしゃぎ」に訂正します。
  新年1発目はキム君待望の田村隆一論。さすがに準備万端の成果発表という感
  じでしたが、「水平・垂直」の理解が他の人とは真逆で、その思い込みのま
  ま突っ走ったので議論が噛み合わず、皆で苦労しました。全体としては、これ
  からの田村隆一論に期待を抱かせるレジュメでした。次回は一橋大で博士号を
  取得した黒岩クンの発表です。来年度の学大の学部授業、瀧(木村)さんと入
  れ替わって担当してくれることになってます。
* 「緑の思想」論、二人のレポは期待以上(?)のデキで議論の素地を提出でき
  ていた。それにしても田村隆一は想像以上に詩が下手だと痛感。