三島由紀夫「近代能楽集」論  『三島由紀夫研究』(鼎書房)  田村景子

とはいえ書き上げたばかりの拙論の話ではない。
掲載される『現代文学史研究』第22集は5月末に出るとのこと、購買希望者は以下の所に直接申し込むと早い(たぶん定価は1000円)。
215−0027 川崎市麻生区岡上125−4 現代文学史研究所

今回記しておきたいのは、別の人の書いた「近代能楽集」論のことだ。
完成稿を上げた後で、小林秀雄関係の本を漁りに大きな本屋(立川のオリオン書房)に行ってビックリ、なんと能楽集論が2種類も出ているではないか!
三島由紀夫研究』(鼎書房)という専門誌が2009年に特集(第⑦号)を出していたし、田村景子という人が『三島由紀夫能楽――『近代能楽集』、または駄地獄者のパラダイス』(勉誠出版)という本が2012年に出ていたのだ。
三島研究にはそれほどの興味が無かったので注意・気配りが届かなかったので、『三島由紀夫研究』という雑誌が継続しているとは気付かなかったしだい。
退職後とはいえ自主ゼミの学生が能楽集で卒論を書いていたくらいだから(書くのを指導したのだから)、関係本が出たら研究室に備えておかねばならないはずだった。
雑誌の方は創刊号が出た時は、敬愛する三島研究トリオ(松本徹・佐藤秀明・井上隆史)から贈られて執筆も勧められた記憶もあるけれど、論文を書くほどの興味が湧かなかった。
でも研究室で継続して購入する手続きをしたと思っていたものの、2・3冊しか入らなかったのですぐに廃刊されたものと受け止めていた。
それが今年も⑬号だったかが出ていて、毎号のように松本さんが健筆を揮っているのが確認できて嬉しかった(最近は学会でも会えなくなっていたので)。
ただ雑誌の薄さに比して定価が高い(2500円)のは悲しかったナ。
でも能楽集の特集号は原典とのつながりに関心が中心で、各作品を独立させて論じた拙稿には利するものがほとんど無かったので無視可能だから安心できた(反論したい気持には駆られた)。
田村さんという人の著書はそうはいかなかった、なにせ後半分の第2部は「『近代能楽集』、全作品を読む」と題されていて、作者が廃曲にした「源氏供養」までが第9章で論じられているのだ。
こちらは2800円だから勉誠出版にしては良心的な値段と言うべきだろうけど、書き上げた身にとって買うのはツラかったナ。
本の価格の適格さは定価自体ではなく、定価にみあった内容の充実度だから、この本の達成度が問われることになる。
まだ「綾の鼓」論と「弱法師」論しか読んでないので結論は先送りしたいけれど、買って損をした気にはならない。
「あとがき」を見たら博士課程の指導教員がボケ仲間のチバちゃん(千葉俊二)らしいので評価が甘くなっているかもしれない。
生まれは下関だけれど、育ちが前橋だと記されているので、同郷(?)のヨシミでハードルを下げているかもしれない。
早稲田の大学院と聞くと、つい余計な心配をして同情してしまうせいかもしれない。
「あとがき」にも名前が出ているけれど、院生に対して何かとハラスメントを加えている教員がいると聞いているので(以前にも記したとおり)心配だけれど、田村さんは幼い頃から演劇(劇団)に近い距離にいたフシギちゃんらしいせいか、被害は受けてない模様で安心できた。
ともあれ、もう少し読んだら詳しい感想を記すつもり(今の感想から変る可能性は低いだろうけど)。