小林秀雄論  幻冬舎  森本敦生  佐藤泰正

10日ほど前だったか、朝日新聞1面の下の本を宣伝する欄に小林秀雄論があったので「またか!」と思った、ウンザリなんだナ、愚物が多くて。
橋本治まで書いたことがあったけれど、ハナから無視していたら佐藤泰正先生から突然電話をいただいて感想を求められて困ったことがあった。
持ってないとお応えしたら、「私はあんな論は認められない」という見解を受け止めさせていただいた。
あのお年であれほどの熱意で文学(小林秀雄に限らず)を注視なさっている姿には胸を揺すぶられるばかり。
今までに一番笑えたのは、著者名の前に「伯爵」と付いていたのを見た時だけど、もちろん買わないから名前は分からない。
今度のは「小林秀雄の後の二十一章」というワケの分からない題で、「小林秀雄の後継者と目される著者がドストエフスキーフルトヴェングラー川端康成平野啓一郎らの批評を」と歌い上げているので失笑が止まらない。
なんじゃこのラインアップは???
小林の後継者は江藤淳吉本隆明柄谷行人というのが私見だけれど、この聞いたことのない小川某が後継者とは知らずに失礼してしまった。
たぶんフルトヴェングラーあたりについては何か言える人なのかもしれないけれど、他についてはねぇ。
ベストセラーを出しているあの幻冬舎の出版というのだから隠された理由があるのだろうが、定価が5500円というのだから幻冬舎にとっては特別(一般には無意味)な著者なんだろうネ。
国立にも大き目な本屋があるので、永井愛の本を探しに行ったついでに見たけれど、この大著は置いてなかった。
代りに仏文研究者の小林論があったけど、こちらの方がずっと読む価値があると思えた(買う気もカネも無いけど)。
仏文研究者の小林論といえば、森本敦生の「美と戦争」がズバ抜けて有益だけれど、小林論者があまり話題にしないのは遺憾だ。
下劣な小林論が絶えず出版されるのは困りものだけれど、幻冬舎までがそれに加担するとは見識を疑うネ(その程度の出版社なのかな、始めから)。