鷲田清一  坪内稔典  藺草慶子

鷲田清一さん連載の「折々のことば」に、今日は坪内稔典(としのり)の俳句「三月の甘納豆のうふふふふ」が選ばれている。
鑑賞文の方はさしたることはないけれど、この句に注目したセンスは鷲田さんが頭の固い哲学者とは一線を劃しているのが明確。
桐原書店の教科書の編集会議で、歌人でもある小林幸夫さんから稔典の句を提案されて初めて知って驚きと共に気に入ってしまったのだが、前代未聞の面白さを表現し得た俳人だと思う。
桐原には「ちょこと行くちょこちょこと行く蜥蜴(とかげ)まで」という句も採られているが、余人にはマネのできない表現力を具えていると感服する。
稔典に限らず、桐原の教科書にはユニークな現代俳句が採録されている所も1つの売りだ、全てサッチャン(小林幸夫)のお蔭である。
現代より少し遡るけれど、渡辺白泉の「戦争が廊下の奥に立つてゐた」という句にもビックリさせられたものだ。
編集委員仲間だったもう一人のとしのり(故・花田俊典)のお気に入りの句でもあった。
ボクの高校時代の教科書(筑摩書房)には現代俳句は採られていなかった記憶だけれど、あの頃に現代俳句に出会っていればもっと俳句を身近に感じられたのに、と悔やまれる。

俳句ではなく『俳句』(KADOKAWA)の3月号が手許に送られてきたので何じゃ? とワケが分からなかったので、俳句にもむやみと詳しいメル友のケン爺(学大名誉教授)が贈ってくれたのかと問い合わせたら違うと言う。
後で藺草慶子さんが星野立子賞を受賞した記事が載ってるから、その関連で送られたのだろうと教えてくれた。
なるほど目次をよく見るとそういうことだったと分かるけれど、俳句をやっていないニンゲンには注目度が低いので目次から見出しにくいのもやむを得ない。
藺草さんのことは前に記したので記憶している人もいるかもしれないけれど、学大連合大学院(博士課程)を中退して俳句(と小学校教育)に専念した人と言えば分かるかな?
「中退」という言葉はイヤだと応えてきた人だけれど、ボクが「中退」の方が能力が高く響くのだと諭した記事を書いたと思う。
ともあれ藺草さんの受賞した句集『櫻翳(おうえい)』(ふらんす堂)を、ここで改めて紹介しておきたい。
星野立子賞の選考委員の1人で信頼できる(テレビの俳句番組でノンスタイルと一緒に出演している)小澤實の選評には、「紅梅となりて一夜を匂ふべく」が推賞されている。
稔典と比べては可哀想かもしれないけれど、皆さんの評価はどうですか?