トランプよりも三島由紀夫へ  ヘンリー・ウォレス  サンダース

今日(12日)は昭和文学会に行って来たので、それを報告したいのだけれど、昨日書き始めたのを完成させてからにしよう。

時事問題を直接語る気はないけど、そこから実になる話に転じたい。
どうせイギリスのEU離脱と連動したトランプ選出というポピュリズム大衆迎合主義)の流れは止められない、ということだろうから。
「最低と最悪の闘い」と言われてきた通りなので、白紙投票をしたというアメリカ国民に心底同情するばかり。
トランプに負けるならサンダースに負けておけばイイだろ、ヒラリーよ、という言葉は抑えがたいけど。
狂人ヒットラーがあれ程の支持を得てしまったことから分かるとおり、ポピュリズムは国を滅ぼす元だ。
ポピュリズムは民主主義と勘違いされがちだけど、大衆迎合衆愚政治と同然であってあるべき民主主義ではない。
それは民主主義の実現がいかに困難かということだけど、理性と判断力を欠いた人々の民主制は危険極まりない。
高校の歴史教科書にあった、アテネの民主制の頂点に位置したペリクレスも「陶片追放」(反対票が溜まれば追放される)の目に遭ったという記述が未だに忘れられないけど、物事の真価を認識できない大衆の支持などアテにならないものだ。

国際連盟を主導したウィルソンがモンロー宣言(アメリカ大陸外には不干渉)を墨守する共和党のボス達に反対され、アメリカは加入できなかったということを思い出した。
トランプはモンロー主義に先祖返りすることを訴えているので、歴史の皮肉のようなものを感じるけど、今度は良識ある共和党員たちがトランプに歯止めをかけるのだろう。
ルーズベルトが病死した後にサンダースに似たヘンリー・ウォレスが副大統領から大統領になれば良かったのだけれど、サンダース以上に「社会主義者」呼ばわりされて失脚したのは惜しまれる。
代わりに大統領になってしまったのは見るからにアホなトルーマンだったので、深慮も遠望もなく広島・長崎に原爆を落としたわけだ。
あの時ウォレスが大統領になっていれば、広島長崎の悲劇は避けられたかもしれないと思うと残念でならない。
サンダースがヒラリーに勝っていれば「最低と最悪の闘い」にならずに済んでいたろうに、と思うとやはり残念でならない。
現状に不満な人々の票がヒラリーではなくトランプを選んだとすれば、排他的でゲスな「最悪」のトランプよりも良識的なサンダースに投票したのではないか、と期待できたのに。

話が広がり過ぎたので三島に持って行きたい。
この際、代表作(?)の「わが友ヒットラー」をぜひ読んでもらいたい。
新潮文庫では傑作「サド侯爵夫人」とカップリングされているのでチョーお買い得。
トランプがもう1人のナチ指導者レームだとすれば、サンダースは社会主義者シュトラッサーに当たると読むと面白いだろう。
始発時のナチ路線を暴走するレーム(右翼)と、シュトラッサーという左翼の間で揺れるヒットラーが、大資本家クルップ(と軍部)と手を結んで(作品には語られないが)両翼の社会主義的グループを粛清・弾圧しながら政権を奪取していくことを暗示しつつ、幕が下ろされる。
ヒットラーの最後の台詞が極めて印象的で忘れられない。
「そうです、政治は中道を行かなければなりません。」

狂信的なレーム・トランプが「中道」を行くヒットラーなり得るのか、見守るしかない。