飯田書店(国立)  坂口安吾  小林秀雄  鹿島茂  内田樹

宮澤隆義氏の群像新人評論賞を見に市内の大き目の本屋(飯田書店と言ったかな?)に行ったけど、『群像』は既に売り切れたようで見ることができなかった。
せっかく行ったのだからと思って地下の文芸モノ売り場に行ったら(小さな街の本屋にしてはけっこう並べている)、安吾小林秀雄の新刊があったのでチョッと中身を覗いてみた。
安吾佐々木中という哲学(?)人の執筆だが、帯に「なぜ安吾は特攻隊を賛美したか?」とか何とかあったのでダメな本だと判断できた。
潜水艇真珠湾攻撃を(事実としては計画しながらも全面的に失敗した)果たした勇者を賛美したようにも見える「真珠」という作品については、昔論じたことがある(『現代文学史研究』)。
そこでも力説したとおり、安吾のテクストは一義的には絞れないのだけれど、佐々木という人は安吾ではシロウトらしく安易に一義的な読解をしているようだ。
この手のものは読んでも得るところが少ないのでスルーしてきたけれど、在職中だといちおう研究室に備えていた類のものだ。
小林の方はもっとヒドクて鹿島茂のおフザケ本『ドーダ本、小林秀雄〜』とかいう書名なのですぐにスル―、読んでも無駄な類のモノ。
小林秀雄をあまり読んでないだろう鹿島が、お得意のハッタリで言いたい放題に書いているのだろうことは察せられる。
小林関係の文献も手近な啓蒙本を1冊見ながら書いたらしいことは、チラ読みですぐ判明したけど連絡くれれば関谷一郎の名著『小林秀雄への試み』を献呈したのに。
5年以上前になるか、鹿島のクラスの集まりがあったので特別参加して広島から上京した伊賀同志(と呼ばれていた)に拙著『シドク』と共に2冊とも献呈したけれど、その時は鹿島は参加してなかった。
3年前、留年して合流した水虫集団の集まりに参加した時には、参加した内田樹にも2冊献呈したけれど、内田にしろ鹿島にしろボクの著のような専門書は読め(ま)ないだろう。
彼らは2人とも専門を離れて一般人向けの面白い本をたくさん出しているけれど、ボク(等)のような求心的な書を読むのは苦手だろうから。
内田は広く知られているけど、鹿島は読書本やフランス文化モノではかなり評価されていて、ボクもフランス文学に登場するパリの文物に関する本を楽しんで学ばせてもらった。
最初のエッセイ『馬車に乗りたい(買いたい?)』とかいう本が、サントリー・エッセイ賞を受賞して以来たくさんのエッセイを出しているし、テレビにも時々出て大風呂敷を広げている。

鹿島は学生時代に(クラスは別なので彼はケジラミ集団ではない)一緒にストライキ破りの授業再開クラスに乗り込んで(1つは理系の大人数クラスだった)、授業を止めさせた仲である。
漢文の授業ツブシに行った時は、ボクが疲れ切って発言できなかったところに、鹿島が老教授に向かって授業再開の不当さを訴える最初の発言をしてくれたので頼れるヤツだと思ったものだ。
教授は当然怒り始めたので授業は中断されたが、その後は教授と我々全共闘学生数人とのナゴヤカな会話ができた。
教授はボク等に自分が喫っていたショート・ホープを勧めてくれたのも覚えている。