野間宏

実に久しぶりに野間宏、それも「顔の中の赤い月」を読み返した(それにしても「真空地帯」とはエライ違い)。
予想以上に読みにくかったので、改めてショーモナイ作家・作品だと叫びたくなったものの、ガマンしているうちに読めるようになった。
文学史的には意味のある作品なのかもしれないけれど、テクストとしてはレベルの低いものだと感じた。
こんなテクストから《細部を立ち上げる》というのは困難に見えたものの、「足」を手がかりにすると文学テクストらしい深みも読み取れてきたので(論文化する学生もいるかもしれないので詳細は略)、ネガティブ評価だけに終らなかったので良かった。
野間宏、というか「顔の中の赤い月」の「手法」を議論してもらったけれど、作家の事実に基づいている素材とはいえ私小説でもないし、リアリズム小説でもないという点は共有されていて安心できた。
レポの1人イクアンさんの日本語発音の明瞭さには感心したけれど、日本語とは意味の異なる「筆墨」という言葉を使っていたのは、30年以上留学生の相手をしていて初めてだったので驚いたものだ。
先行研究の1つ、宮内豊氏の論を踏まえたカンナイ君の問題提起は、固定した作家イメージにキズを付ける切れ味があったものの、部分に止まった印象。
テクスト全体を読み換えるにはもっと読み込まなければならないだろうけど、補助的レポの役割なのでそこまでの要求はできないネ。

@ 次回は志賀直哉小僧の神様」、昔『解釈と鑑賞』に論を寄せたので予習が楽そう。