次回は安部公房「赤い繭」

徳田秋声「絶縁」の発表はジュネットの焦点化という概念が、秋声のテクスト分析にどこまで有効に機能するかを試みたという面が強かった。
なかなかハマらない分析だったけれど、慣れない作業なので仕方ないが、こうした試行錯誤の積み重ねを通して理論を有効に使えるようになるものと期待したい。
《語りの現在》の捉え方も外れていて、これも慣れるには時間がかかるということか。
おおよそテクストに明らかな《語りの現在》を表す言葉が無ければ、テクストの結末部がそれになることが多いと言ってよかろう。
「絶縁」もそれに当たり、結末部の時点から回想される物語であるから、多くの物語同様に時制が過去形になるわけだ。
レポーターの意欲・積極性が伝わってきたので、今後が期待される。

次回は安部公房「赤い繭」、文庫なら『壁』(新潮社)に収録されている。