「アート・ステージ」  ゴヤ  堀田善衛「ゴヤ」

とてもイイ番組ながらも、自分でもなかなか定期的に見る習慣が付かなかったので紹介が遅れた。
TOKYO MX1のせいかナ、「5時に夢中」のイメージしかないから。
それがとても充実した美術番組を放映しているのだから、おススメしない手はない。
土曜午前10時半から短時間ながら(実質20分程度)、画家や作品について詳しく説明してくれる。
今日はゴヤを「マドリード、1808年5月3日」中心に紹介していたけれど、ナポレオン率いるフランス軍に抵抗した市民の銃殺を描いた場面で、殺される市民の中央で両手を上げながら銃弾を受け止めようとしている白シャツのヒゲ男の掌に、イエスと同じ傷痕があると指摘された時にはビックリした。
いわゆるスティグマ(聖痕)というやつなのだけれど、自家にある大部の画集(昔の集英社のもの)で確かめたらクッキリと見えた。
これなら確かにフランス軍に対して抵抗運動を展開した市民に、イエスの姿をダブらせたゴヤのモチーフは明確だ。
昔、bunkamura の美術館でスティグマを見落として「ケガをした大工の少年」という作品説明を読んで苦笑させられたことがあるけど(イエスが大工の息子だという認識が学芸員に欠落していた)、今度は自分に苦笑が漏れた。
版画集『戦争の災厄』から「私は見た」という作品も紹介していたが、ゴヤには虐げられた民衆に同情的な作品があったことも想起させられた。
昔、何度か行ったことのある町田市立国際版画美術館でゴヤの版画作品をたくさん観たのだけれど、手許の画集には残念ながらほとんど版画が収録されていないながらも、巻末の解説には版画集『気まぐれ』(原題が「ロス・カプリチョス」のものか?)などから何点か紹介されている。
これらを見るとゴヤの叛逆精神が直に伝わってきて心が揺すぶられる。
絵画としては見慣れた2つのマヤ(マハ)よりも、番組でも取り上げられた「自分の息子を食うサトゥルヌス」にスゴさを感じたので、堀田善衛の大作「ゴヤ」の一部であろう「ゴヤ――「暗い絵」について」が自家にあるので読んでみたいと思った(「サトゥルヌス」は「暗い絵」のシリーズに入っている)。
先般、大先輩が絶賛していたボストン美術館展のモネ作品がらみで、手許にあったモネの画集の解説を読み直していたままなのに(遡れば小林秀雄の評論を読みながら、2ケ月以上前に観た富岡鉄斎の画集も途中で放ったまま)、今度はゴヤの絵と解説に時間を費やしそうな予感。
美術とオンナは目先が変わると手放し難いものだ。