松本清張「影の車」  三好行雄批判!

清張ファンだという留学生が「鉢植えを買う女」という作品について発表するというので、文庫を探したり全集を検索したけれど見つからない。
困って推理小説に詳しいクリマン(栗田卓)君に尋ねたら、当該作品のPDFを送ってくれたのでホントに助かった。
のはイイけれど、後で判ったのはこれが「影の車」という短編集の一部だということで、研究するには無知過ぎるのに院生とは困ったモノだ。
ボクは学大時代から留学生にも厳しいのだヨ、ヤル気があれば支えるけどネ。
ともあれ『影の車』という表題の文庫なら見かけたし、全7話のシリーズの「第四話」だと示してくれたなら準備のしようがあるというもの。

それにしても一読ヒドイ作品だ! 呆れてモノが言えん、というレベルで清張本人以外が書いた代作か? と思えるほど愚劣な仕上がり。
もともと(遠藤周作ともども)清張の文学性・文章には強い疑問を抱いていたものの、これほどヒドイ作品は初めてで驚いた。
唯一自家にある清張本の『或る「小倉日記」伝』(新潮文庫)に収録されている諸作品でもそれなりに読めたのに、この低劣さは何だ?
ウソだと思うなら読んでみよ! 引用するのも気が引ける、というより2度と見たくない文章だ。
シロウトでも、高校生でも書けるショーモナイ文章であり設定なのだから、こんな作品で研究発表などやりようがない。
と思ったとおりの次元なので、ここで発表について記すことは無い。
でもレジュメの「セフレ」の意味がハッキリしなかったのを(吾ながらスゴイ時代遅れだと自覚させられた)、留学生に教えてもらえたのは収穫(?)。
先日は大学の先輩のメール中の「オワコン」という言葉が初耳で問い合わせたくらいだけど、ケイタイも持たない時代遅れは貫くゾ!


授業中にこれも推理小説に強いグッチ(関口雄士)君が『影の車』文庫本の解説を書いている三好行雄の文章をコピーしたものを配布してくれたけど、これがまたヒドイ!
文章ではなく、こんなヒドイ小説をあの三好行雄が絶賛しているのだから、もうこの人は終った(ボケた)とガッカリしたけれど、この師匠が亡くなったのは20年以上も前だったか!
ということは現役の頃に書いたもののはずだから、これこそ弟子の誰かが代筆した解説なのかもしれない、とは思ったものの代筆などさせない人だったからワケが分からなくなった。
これも引用するのが恥ずかしくなるほど無暗にヨイショしているのだから、生きていてくれれば学生時代のカタキを取って徹底的に批判してやるのに、と残念だった。
いかに推理小説が好きな師匠だったとはいえ、レベルを無視して褒めちぎればイイというわけではあるまい。
生きていてくれたなら、学生時代には自信を持って発表してもことごとくヤッツケラれた恨みを晴らすことができたのに!
これまでになく師の死を口惜しく思ったものだが、この解説文を『三好行雄著作集 第四巻』に収録しなかったこの巻の編集担当者である白石喜彦・登尾豊・羽鳥徹哉(故人)・渡部芳紀各氏に敬意を表する次第。