松本和也『日中戦争開戦後の文学場』・『現代女性作家の方法』  教育者としての石崎等

ガチャ(カツヤの津軽方言、正確には太宰「思ひ出」方言)がまたまた近著を贈ってくれたので、優先順位を無視してつい読んでしまった。
最近「終活」の一環として溜まった書簡を整理しているのは記したけど、ガチャの先輩であるイクオちゃん(新城郁夫)の手紙が数種出てきたので読んでいたら、彼の論(取りあえずは3本ある目取間俊論)を読みたくなって『沖縄文学という企て』を書棚から取り出したところだった。
このところ書き慣れない仲間たちの論文指導を続けているところでもあったけど、ガチャの論には強い引力を感じてしまって読み始めてしまう。
理由は簡単で、彼の興味がボクに重なる所が多いからだ。
最初は太宰だけだったけど(安藤宏以来の刺激を感じたものだ)、しだいに戦争期の文学を論じ始めたので、その種の本を買い溜めていたボクには優れた導き手を得たようなものだった。
前著『昭和一〇年代の文学場を考える』には圧倒され、その絶賛の気持を『昭和文学研究』の書評欄に発表したので参照してもらいたい。
関心を同じくするだけなら平野謙以来たくさんの批評家・研究者がいるけれど、旧来の論考には見られない切り口で論じてみせてくれるので感心すること頻り。
ヒグラシゼミで「純文学」以外に無知なボクにいろいろ教えてくれるヒッキー先生(疋田雅昭)もガチャと同じ頃の立大院の出身で、先輩のイクオちゃん共々たくさんの知的刺激を与えてくれるので感謝するばかり。
ガチャについては特に強調できるけれど、これらの傑出した研究者を育て上げた石崎等さんの教育能力にも脱帽だネ。
石崎さんを引き継いだ石川巧さんも、立て続けに優れた研究成果を出すだけでなく、若い研究者を育てている姿を見ていると、金子明雄さんもいる立教院の未来は明るいネ。


さて今度の書が前著の延長上の論考であるのは外題からも明らかだろうけど、作家でいえば岸田國士井伏鱒二・日比野士朗など戦争期の活動が気になっていた名前が目次に並んでいるので、ついつい読んでしまう魅力に溢れているのだナ。
読み始めたと言っても長文の「はじめに」だけ読了したところだけど、ボクのような行き当たりばったりのやり方とは全く異なり、松本和也の場合は方法意識が極めて明確であるので、普遍性とまでは言えないまでも融通性があるので他の作家・作品にも応用できるし、他の研究者にも利用できる方法だから「論じ方が分からない」とコボしている人は見習うとイイ。
もちろん同じ方法を利用したところで、優れた結果を出せるか否かは作品・文学史を読み解く論者の能力しだいということは書評でも強調したとおり。


『現代女性作家の方法』は江國香織小川洋子川上弘美など7名の作家を取り上げているけれど、この種の著書も『現代女性作家論』などがあって松本和也という研究者の質量優れた能力には驚かされる。
現代の作品はあまり読まないのでこちらの論には言及できる立場にはいないけれど、以前川上弘美「神様」の松本論における勇み足を指摘した身としては、その手の勇み足をくり返さないことを祈るのみ。