劇団チョコレートケーキ  ナチと収容所  黒沢清「岸辺の旅」

昨夜はBSプレミアムシアターで劇団チョコレートケーキ公演の、「あの記憶の記録」と「熱狂」を録画しながら観た。
ナチズムの歴史を素材にしているというので興味を持ったけど、観ているうちに引き込まれてしまい、録画の不足分を大好きな番組「英雄たちの選択」を消去しながら録画した。
前者は戦後のイスラエルが舞台で、収容所で死体の処理をしながら生き延びた兄弟が、妻や子供たちにも秘めていた収容所における活動を明かしながら、戦争反対を主張するという話(かな?)。
後者は表題のとおりで、ナチがヒットラーを中心に勢力を拡大していく経緯を、ナチ内部の権力闘争を詳細に描いていた。
三島由紀夫「わが友ヒットラー」ではレームとシュトラッサーの2人だけの対比だったものが、7・8人の抗争が迫力もって展開されていてワクワクしながら観終った。
劇団の名称に似合わず、現代世界にコミットする素晴らしい舞台だったナ。


今は珍しく映画を観ながらブログを書いているところ。
黒沢清監督の「岸辺の旅」という作品なのだけれど、黒沢芿という気になる名前に惹かれて見始めたらスゴク面白い。
湯本香樹実という人の小説の映画化なのだそうだけど、原作も作者も知らないものの映画は素晴らしい。
原作小説も面白いのかもしれないけど、映画はそれ以上の達成を示しているように思えてしまう。
同じ物語内容であろうが、表現者によって優劣の差が現れるというのは基本であり根本だ(井伏鱒二「黒い雨」の成立にからむ問題)。
ともあれ「岸辺の旅」は3年前に失踪した夫が、死者になりながら妻の許に現れ、2人が夫が死者のまま世話になった人々にお礼かたがた訪れるというストーリーだ。
痛切な場面もあるけれど、夫が生前浮気していた相手の女に会いに行き、女同士が火花を散らす場面は笑えた。
女の嫉妬心の強烈さはいつもながら驚きだけれど、他人事(ひとごと)だと笑えるから楽だ。
演劇の方はともかく、映画はツタヤで借りられればおススメの作品です。