ロシア・アヴァンギャルド  クルジン  亀山郁夫(訂正版)

今日の深夜0時45分から、プレミアムカフェで「知られざるロシア・アヴァンギャルドの遺産」が絶対おススメです。
朝9時からの番組の再放送ですが、実は十年以上前だったかの再々放送で素晴らしい内容だからご覧下さい。
スターリン時代はもちろん大弾圧を受け、その後の「雪どけ」時代のフルシショフには「馬のシッポ」でも描けると失笑された抽象画を中心に制作されたロシアの前衛芸術が、サヴィツキーという理解者によって蒐集・保存されていたものがソ連解体後に開放されたのを、(ドストエフスキーの新訳で知られた)亀山郁夫さんがウズベキスタンにあるその美術館などを訪れて紹介・解説した番組だ。
むかし放映された際に録画(たぶんビデオで)したはずなのだけれど見当たらないので、改めてブルーレイで録画し直そうと思っている。
それに価するほどたくさんの名画(長年隠されていたものが日の目を見たのだが色彩がキレイ)が画面に映し出されるから貴重、これらを集めた画集が刊行されているなら観たいものだ。
ロシア・アヴァンギャルドといえば、カンディンスキーならどなたもご存じだろうけど、番組の中心はクルジンという画家で彼の批判精神あふれる絵がスゴイ。
先般「ららら・クラシック」で取り上げられたソ連の大指揮者・ムラビンスキ―について書いた際に、「ショスタコービチの証言」には体制側の指揮者としてショスタコービチが批判していると紹介したけれど、本書は冒頭部分でスターリンによって粛清された天才メイエルホルドに対する賛辞が記されている。
ショスタコービチがスターリンから批判された交響曲第4番がまさにアヴァンギャルドと言えるだろうけど、メイエルホルドも同じ前衛的な演出家だったので殺されたわけである。
大弾圧の後には社会主義リアリズムの時代となり、ショスタコービチも自己批判した上で交響曲第5番「革命」を作曲したわけだけれど、演劇では日本でもよく知られているスタニスラフの時代となった次第だ。
  

亀山郁夫さんというとドストエフスキーの翻訳者として知られてしまったけれど、もともとはアヴァンギャルドの研究者だったらしく(以前『現代思想』の特集号で、ドストの専門家である望月哲男との対談で亀山さんが気を使っているのを紹介した)、岩波新書に『ロシア・アヴァンギャルド』(1996年)の著書がある(買ったまま積読してたら2冊あったのでミチル姉さんに上げた)。
未読だったのであわてて覗いたら、出版年に明らかなように前掲の素晴らしい美術品が公開される以前の書だったので言及はない。
しかしロシア・アヴァンギャルドについての基本的事項が記されているので、これもおススメ本だ。


@ 亀山郁夫さんのお名前を「亀井」と記していたのを、福井大学の中川智寛さんに指摘されて気付きました。
  ちょうど先年逝去された亀井秀雄さんの思い出話を書き終えたばかりだったので、「亀井」と記してしまいました。
  日本文学を専攻している者には、どうしても亀井秀雄さんの存在が大きいので素直に(?)間違えてしまいました。
  のみならず亀井さんはマエタカ(前橋高校)の大先輩という存在感もあって、亀山さんには失礼な誤記となりました。
  訂正してお詫び致します。