川村二郎

先般、国分寺古書店・七七舎で川村二郎の第二評論集『幻視と変奏』を100円でゲットした。
実力派だとは分かっていたけれど、ドイツ文学者のせいかあまり読まずにきた評論家、目次に太宰論そして特に井伏論が並んでいたので是非読みたいと思った。
その他のマーラー論などの音楽エッセイも3本も魅力だった。
早速井伏論を読んだのだけれど、期待以上に面白かった。
井伏というと高水準の研究書・滝口明蘒さんの『井伏鱒二と「ちぐはぐ」な近代』(新曜社)を拝読するのを楽しみにしているものの、1部を除くと未だに読めないままなのが残念。
滝口論を読むには対象となった作品を再読してからでないと読みにくい気がするけれど、川村論は井伏概論なので気遣いなく入れるのがすぐに読めた理由かな。
《「庶民」というのは、ぼくの嫌いなことばの一つである。》という冒頭の1文が素晴らしい。
おおかたの井伏論を敵に回す断言に現れた自信のとおり、「複合的な視線」という独自な切り口で楽しませてくれる。
ボクが最初に書いた「山椒魚」論で「珍品堂主人」を読んで井伏はダメだと思ったと決めつけたけれど、川村二郎も評価していなかったので批評眼を信頼できた。
むかし東京大学国語国文学会で、「炭坑地帯病院」を評価しながら「黒い雨」の誤算を指摘したけれど、川村も似たようなことを書いていたので他の論も読んでみたくなった。
自家には川村の評論集が他に2冊ほどあったと思うので、そちらも気になっている。
川村二郎、読むべし!