谷崎潤一郎「「金色の死」  留学生とも思えない発表  古山高麗雄の「白い田圃」

安田淳平さん問題に追われ、授業の感想を記すのを忘れていた。
ヤン(楊)君の発表は留学生とは思えないレベルだったので驚いたけど、まだ大学院入学前なのにレジュメが11ページ超の長さなのだからビックリするしかない。
日本語能力もハイレベルなのでそれも驚いたけれど、聞いたら広島大学の学部で勉強した実績があるというのでほぼ納得。
広大では下岡友加さんの授業を受けたり、キレ者の柳瀬善治クンも知っているとかいうので、これも驚いたけど広大生だったら当然か。
お2人は畏友・樫原修さんの「教え子」だから、世間の狭さを実感した次第。
ヤン君文学研究の基礎はシッカリできた上で、対象を谷崎に絞って研究を持続しているのが現れていたので将来が期待できる。
周知の(?)三島由紀夫の「金色の死」論を要約する蛮勇も具えていて、その上で最近の先行研究を踏まえて考察している姿勢は堂々たるもの。
しかし肝心のヤン君の読みである「蜘蛛から如来へ」というところが、説得力に欠けるので惜しまれた。
大正期の谷崎の「脱出願望」もこれからの検討課題だろう。
いずれにしろまだ「入院」前なのだから将来が楽しみ。
授業中に指摘したけれど、結末の場面の参考として「キリスト教の油絵」(レジュメの言葉)をネット検索から3枚付していたけれど、マンテーニャの「死せるキリスト」はドストエフスキーがその前で引きつけを起こしたというホルバインのキリスト画と同様に、イエスの肉体性(死すべき身体)を表現したものであり、他の2枚の磔刑図とは性格がまったく異なるので不用意だった。


次回(といっても明日だけど)は古山高麗雄の「白い田圃」、埋もれそうな作家を掘り出して紹介してくれている関口クンの反戦小説論、あるいはユーモア小説論が楽しみ。