「万葉集」余話  稲岡耕二  渡部泰明  鉄野昌弘

西郷信綱の説を品田悦一がより緻密に展開して名著にまとめたというつながりは記したけど、西郷信綱中西進にも共通点があるという指摘を大先輩(匿名)からいただいた。中西さんが再婚した理由が西郷氏のように若い女を選んだのかどうかは不明だけど、大先輩に言わせると藤井貞和さんも含めて万葉研究者は女性に対する情熱がハンパナイので再婚できるのだ、ということだ。ナルホドかな、それにしても羨ましい。

 

昨日たくさん書いたから、今日はこれくらいにして、と思ったけれど「万葉集」の話題ならまだあった。学部1年生の時の「文学」という授業だったかな、稲岡耕二という万葉学者の講義を気乗りしないまま受講したのだネ。教養部の頃は近代文学越智治雄先生の授業以外には惹かれなかったので、稲岡さんのも午前中の授業だったこともあって出席しにくかったナ。数えるほどしか出なかったから内容は全く覚えてないけど、試験問題に「国見の歌」(見渡すとかまどの烟が立っている、くだけて言えば「民の竃は賑わいにけり」というやつネ)の意義を記せとあったので、天皇の領土宣言だと書いて雀荘の仲間の元に戻って自慢したら、けっこうウケたものだった。

結果は赤不可(不可は赤インクで記された)だったので、稲岡という人はセンスが無いと決めつけて終った。歌の解説が終ると欠かさずに節を付けて気持良さそうに歌うのも嫌だったネ。万葉集学者の伝統なんだろネ、誰が始めたのか知らないけれど。放送大学で渡部泰明がやはり節をつけて歌うので、タマラナイね、汚いダミ声なのに。研究者としては切れ味不足に見えるのに、東大(駒場だけど)にいるのも納まりが悪いナ。駒場の万葉学者は稲岡さんが在職中に、同じ万葉学者を呼んだと言って怒っていた古典文学者がいたけど、裏ワザ人事が横行しているのかな?

その点、本郷(文学部)の万葉学者である鉄野昌弘さんはスゴイらしいネ。鉄野さんが東女に在職していた頃の愛弟子である、村本春香が彼を絶対視していたことからも、エライ学者だと察したヨ。村本さんはダテに教員を褒めないからネ、よほど心酔しないと好評価を公言しない若き逸物だ。

その村本さんが敬意を表している河添房江さんの、退職記念号の『学大国語国文学』に「万葉集」についての論を発表している。以前彼女が『日本文学』に発表した論文を読もうとしたけど、専門的過ぎてすぐに挫折したネ、在職中で余裕もなかったけど。せいぜい平安文学までは読めても、万葉になると種々ハードルが高いのでたいへんだヨ。稲岡さんのお蔭で万葉アレルギーになったわけじゃないだろけどネ。

(けっこう書いてしまったネ。)