【読む】『シドクⅡ』進行中  『昭和史講義(戦前文化人篇)』(ちくま新書)  竹田志保の吉屋信子論

生涯最後の本、現在原稿のチェックに励んでいます。読みやすく書き直したり、引用文のチェックに苦労しているところです(もちろん文章の彫琢もネ)。ただ当初のもくろみより出版がだいぶ遅くズレこみそうなのが心配です。生前告別式を兼ねた出版記念会が、仲間の皆さんのお忙しい時期に重なりそうなのが心配です。

というわけで、他の用件は後回しにしている状態なので、頂いた本や論文の礼状や感想が書けないままなのが申し訳ないかぎりです。特に木村仁志クンのロブ=グリエ「嫉妬」論を読むのが楽しみながらも、まだ当の作品自体が読めていません。

 

昨日は筒井清忠編『昭和史講義』を落掌して何故? と思ったらジッポ(竹田志保)からでした。また何故? と思ったら、戦前の作家たちが戦争をどう生きたか、というアンソロジーだったので納得。ジッポは先般歴史に残るスバラシイ『吉屋信子研究』(翰林書房)を出した優れ者ですが、本書でも吉屋信子を担当しています。

全16章の中の文学者は谷崎を千葉俊二・乱歩を藤井淑禎林芙美子川本三郎といった〈大家〉が大過なく担当している一方、ジッポのみならず新鋭の研究者である牧野悠クン(むかし千葉大の学部生の演習を担当した際のティーチング・アシスタント)がお得意の大衆小説分野で長谷川伸を担当しているので楽しみです(今の仕事が終れば読める)。西条八十は「東京音頭」を始めとする流行歌で知られているけれど、詩も好いのがあるのでおススメながら、論じている編者・筒井清忠という人は歴史学らしいので、文学論としての面が出ているか不安が残る。

文学者とも限定しにくいけど、柳田国男は著名な「東北論者」である赤坂憲雄さんが担当している。論者は知らないけれど、中里介山保田与重郎も取り上げられているので、楽しい読書になるはず。和辻哲郎鈴木大拙も取り上げられているヨ。

文学以外では藤田嗣治山田耕作といった美術や音楽まで目配りが良いし(耕作論は片山杜秀という見た目はキモワルながら優れ者が担当)、日本では珍しく尊敬すべき政治家(今は安倍晋三など政治屋ばかり)も第1章に位置しているし、「のらくろ」というマンガで知られた田河水泡も取り上げられているけれど、水泡は小林秀雄の義理の弟だって知ってる? 小林のボーッとしている実の妹が水泡と結婚したからネ。