【観る】岸田劉生展は20日まで  絶対おススメ!  神田日勝  NHKテレビ小説「なつぞら」

 19・20日は恒例の師匠(三好行雄)のご家族とご一緒する旅行会であり、出版等の記念会の案内状発送作業が一段落したこともあるので、今日ステーション・ギャラリーに行ってきた。昔は東京駅のど真ん中にあって、そこで数回国芳展などを観たことがある。その後は北側に移ったのは知っていたけど、行ったことがなかったせいか、というより丸の内側なのに八重洲口に降りてしまったボケで、着くまで時間がかかってしまった。意識しないところで老化が進むばかりでイヤだネ。

 いつものように真っ先に観たい作品に一直線、麗子像の中でも傑作と言える「麗子五歳之像」。すごいインパクトで10分くらい目が離せなかったナ(この美術館の観客は静かで遠慮がちだから1点に時間をかけて観ることができるのが嬉しい)。小さな作品なのに、あちらこちらから観る楽しみに満ちている。顔がスゴイだけでなく、着ている着物がまたスゴイ(スゴイと言うしか言葉が浮かばない)。この1点だけでも入場料1100円と交通費1100円以上かけて観る価値がある、ゼッタイ!

 続いてこれも一番の目当ての1つ、「道路と土手と塀」(題名はヒドイ)を探し出したけど、むかし初めてテレビで観た時の感銘が無い。麗子像の傑作を先に観てしまったせいで、インパクトが薄らいでしまったのだネ。先にこちらを観れば良かったヨ。そんなわけだから、他の作品は付け足しのようなものだったけど、作品鑑賞というより劉生の模索の跡をたどる楽しみは十分あったネ。ゴッホをはじめあんなにあれこれと模索していたとは驚くネ。ご存知のように何十ケもある麗子像の多さにも現れているけど、傑作「五歳の像」がストレートなデューラーの影響下にあるのを代表として、水彩を含め種々の試行をしているのが面白い。

 

 麗子像では他に1919年8月23日の作品(日付を言わないと差異化できないほど多い)がスゴイ。箱根のポーラ美術館所蔵のものだけど、むかし昭和ゼミ旅行で観た時の麗子像が、これだったという記憶がハッキリしない(それほどイイ麗子像が沢山ある)。これは顔よりも着物のスゴイ、質感が圧倒的で感動したネ。顔では「信行之像」がほとんど「五歳の像」につながる書き方でスゴイけど、他の肖像画は概してツマラナイ。セザンヌ風と言われる「B.Lの像(バーナード・リーチの像)」は特異で目立つものの、それだけの話。個人的に好きな木村荘八の肖像は、こんな顔だったのかという程度。

 風景画にはゴッホの影響が明らかなのが多いけど、比較的最近世に出たという「黒木土の上に立てる女」は(解説には触れられてないけど)ルノワールだネ、女性の豊満な肉体というより着物のタッチがそう思わせるナ。自画像はマチス(?)のような変なものを除くと、概して素晴らしい。似た作品が多いものの微妙な差異を楽しめるけど、教養部時代の同級生であるヤマちゃんにそっくりなのが鑑賞上ジャマだったネ。

 エッチングデューラー(?)の影響そのものだけど、感心したネ。木版も少なくないようだけど、これらは時代の反映なんだろネ。恩地孝四郎をはじめとする版画の時代だったからネ。そう言えば朔太郎の一連の「竹」作品の挿絵を思わせるのもあって、笑えたネ(真似したわけじゃないだろけど)。絹本着彩や紙本着彩という日本画風のものもたくさん出品されていたけど、あまり感心しなかったナ。晩年の作品は(38才で早逝したけど)ボケたのか面白くない。

 インパクトがスゴかったせいか、書き過ぎた気がするのでこの辺で。 

 

 見覚えのある馬の絵のチラシがあったのでもらったら、神田日勝展を来年4月からステーション・ギャラリーでやるというので喜んだ。チラシにはNHKの連続テレビ小説なつぞら」のモチーフになった画家とあるけど、ドラマは全然見ないのでそんなテレビ小説があったのかとチョッと驚いた。マイナーな画家なのにネ、以前NHKの日美だったかで取り上げられた時に、ゲストで古井由吉が出ていたのは覚えている。東京では40年ぶりの回顧展だそうだから、その時の古井さんは北海道で観たのかな?