【読む】荒井裕樹がちくま新書を  『障害者差別を問いなおす』  クイズ番組でクズぶりを発揮している東大生よ、恥を知れ!

 荒井クンについては以前、別の書を出したのを機に紹介したことがある。学大では突出した存在で、大学院は東大に行って博士号も取得し、現職は二松学舎大学准教授。文学一般でも融通無碍に論じる力量があるものの、学部生の頃からハンセン病を主とした障害者文化文学研究を志して今に至る。以前紹介した書はどれだったか、『隔離の文学ーーハンセン病療養所の自己表現史』(書肆アルプス)や『生きていく絵ーーアートが人を〈癒す〉とき』(亜紀書房知的障害者のアートを論じたもの)などがある。

 相模原事件のオゾマシイ記憶が冷めやらぬ今日、これを直接受けて書かれたわけではないながらもタイムリーな書を手に入りやすい形で出してくれた恩恵を受けるべきだろう(読みなさい!)。問題を根底から、しかも「です・ます」調で分かりやすく書かれている。「障害者は殺されても仕方がないのか」(第5章)や「障害者は生まれるべきではないのか」(第7章)などという章題を見ても、荒井クンの挑発的な本気度が伝わってくる。

 クイズ番組でチヤホヤされている東大生のおバカぶり(クズ!)にはぶん殴りたくなる衝動を抑えがたいけれど、真っ当な仕事をしている東大卒業生もいることを忘れて欲しくないものだ。無駄な知識をたくさん覚えてもショーモナイけれど、荒井クンは学部生の頃からハンセン病療養所をくり返し訪れながら、〈知〉を磨き続けた成果の1つが今度の新書だ。クズ東大生も荒井クンのイ(意)を汲んで、クイズなどにウツツをぬかしている場合じゃないことが分かるだろうに。

 

 ずい分前に荒井クンに打ち明けられて驚いたのは、彼がハンセン病に関心を抱き始めたのは、ボクが授業で小林秀雄の『作家の顔』(新潮文庫)をテキストで講義をした際に、北条民雄の「いのちの初夜」と出会ったのがきっかけだったとか。図らずも荒井クンの生涯を決める契機を用意してしまったわけだけれど、その時の受講生が揃ってハンセン病に関心を抱いたわけではないから、やはり荒井クンの生来の〈知・情・意〉が為せるワザだったわけだネ。バラバラな知識を多量に覚えても〈知〉も〈意〉も〈情〉も養われないのだヨ、クイズ狂の東大生たちヨ!