【聴く】弦楽四重奏団  ショスタコービチ(の証言)  

 アシュケナージの記事が長くなったので、別に記すことにした。2005・4・28の音楽時評では、伊東信宏という未知の人がフェルメール・クァルテットを取り上げている。あまり聴いた覚えのない四重奏団だけど、伊東氏によれば世界的レベルの四重奏団に引けをとらないのだそうだ。名前からすればヨーロッパを思わせながらも、シカゴを本拠としているとのこと。世界的レベルのオケであるシカゴ饗と結び付きがあるのかな? 

 超一流のアルバン・ベルク四重奏団が「速く、大きい弓使いで豊かな倍音を響かせる」のに対して、フェルメールは「あまり弓を走らせすぎず、しっかり鳴っている実音が響き合う」という特色なのだそうだ。専門過ぎてボクには分からないけどネ。第1ヴァイオリンがソリスティックにならず、完全にアンサンブルに溶け込んでいる」という特色は、往年の一級カルテット・スメタナ四重奏団を想起させる。

 (当時は)若手だったハーゲン四重奏団は「もう室内楽という枠などかなぐり捨てて暗い淵を覗き込むような解釈」なんだそうだけど(フ~ン)、これも専門的な聴き手ならばこそ。最後の曲であるベートーベンの「ラズモスキー第1番」がまた絶賛されているネ。スゴイ四重奏団なのだネ、そこまでとは知らんかったけど。

 

 ボクが生演奏を聴いたのは、ロシアのボロディン四重奏団がバルトークの6曲全部を2日がかりで演奏したものだけだネ。バルトークの四重奏は一番緊張させる曲だと思うけど、2日通ったらメチャ疲れたのを覚えている。自家で録音を聴いていても緊張を強いられるから、あまり聴く機会が無いネ。ベートーベンもモーツァルトハイドンも疲れずに楽しめるけど、個人的にはショスタコービチの四重奏曲が好きだナ。全15曲すべて録音(録画も少し)してあるけど、交響曲ソビエト政権がいちいち文句を付けてくるものの、四重奏曲は目立たないので比較的ショスタコービチが思うままに作曲できたのだそうだけど、交響曲のように政治に合せた底の浅さを見せることは無いネ。

 交響曲で言えば、政治局からモダニスムだと徹底的な批判を受けた第4番を、まだそえほど売れてない頃の島田雅彦が新聞のちっちゃなコラムで評価していたのを忘れない。さすがに東外大のロシア語科を出た作家だと、小説よりも関心したネ。

 そう言えば文学史の授業でも紹介したことのある『ショスタコービチの証言』が、未だに読了しきれていなままだ。在職中に読み始めて、とても興味深くて面白い読み物なんだけどネ。今では文庫も出ているようだからおススメだヨ。日本人が神様のように崇めていたムラビンスキ―(ボクもスゴイ指揮者だと思うけど)のことを、ショスタコービチは初演も数曲してもらいながらも、頭の固いスターリニストとさげすんでいるヨ。冒頭で触れている傑出した演出家・メイエルホルドが、これもモダニスムだと言われてスターリンに粛清されたのは、返す返すも無念だネ。これも昔から日本人はリアリズムの演出家・スタニスラフスキーばかり拝んでいるけど、情けないかぎりだヨ。

 音楽の話になると、つい止められなくなって長くなってしまうネ。