【聴く】一之輔の「芝浜」は談志よりイイ  桃月庵白酒

 5日の深夜に「落語ーGORAKU-」という2時間半の番組があって、つい後半の1時間くらい見てしまったヨ。そのくらい充実していたのだけれど、コロナ禍の特番なのか毎年やっている番組なのかは不明。MCが柳家喬太郎で実力のある落語家(ということは間違ってもヨネスケは出ない)が続々登場したので、つい見てしまったわけだけど、桃月庵白酒の「茗荷宿」という初めて聞く出し物(真打ちはあまりやらないネタとのこと)も良かったものの、トリの春風亭一之輔の「芝浜」が意外に楽しめたネ。

 「芝浜」と言えば談志(通は三木助だと言うそうだ)が歴史を作ったという評価があるだろうけど、以前にも記したようにボクは落語家の(談志の)人情話は楽しめないから嫌だったネ。それを一之輔が変えてくれたので、読書もせずに落語を聴いていて良かったヨ。大好きな談志だけど、「芝浜」は談志が話の世界に入り込んでしまうので、人情にホロッとさせるかもしれないものの、落語が客を泣かせたり感動させたりしてはダメだネ。

 その点一之輔は話自体を突き放し、人物や物語世界から距離を取りつつ全てを語りの中に取り込んでいるところがイイね。スタジオで、かつ時間限定のため端折って語る、という前提も効を奏したのかもしれない。あまりホンキさマジメさを感じさせない姿勢が、私小説ばりの臭さから免れていたネ。逆に言えば談志の「芝浜」はその種の臭さ・真剣さがハナにつくということだネ。落語は気楽に聴けるものでなくてはネ。喬太郎も新しい「芝浜」が聴けた気がすると言っていたのも、そのあたりを評価したのかも。