【状況への失言】クリトリス切除禁止、スーダンでも  ハーディ「テス」  山口敬之・はすみとしこ2人の「男」らしさ

 決して下ネタじゃありません。

 朝日新聞(6月9日)の記事「女性器切除 スーダンも」という見出しでは何のことだか通じにくい人もいるかも、と思ってハッキリ書いたのだネ。いわゆる「割礼」でユダヤ民族では男子がポコチンの表皮を切って、鬼頭を露出させる儀礼に当たり、女子の場合はクリトリスを切除するわけだ。女子の場合は民族や宗教に根拠づけられているのかどうかは不明ながら、新聞の註によると数千年前からのもので、アフリカのみならずインドネシアや南米コロンビアからも報告されているとのこと。国連では2012年に人権侵害として禁止する決議を採択したそうだけど(遅くない?!)、スーダンでは長期支配を続けたバシル大統領が失脚したのを契機に、暫定政権が欧米との関係改善を図って禁止に踏み切ったらしい。

 言うまでもなく切除は極めて危険で、出血して死亡したり感染症になったりする場合が少なくない。ボクがむかし見たテレビ番組では、何年も使用し続けているカミソリと不衛生な水で措置するので、犠牲者が多いという説明があったネ。施術者は占い師的存在で、女性たちは長年の風習として拒否しにくいので、(土地に入り込んでいる欧米人の)啓蒙活動にも限度があるということだった。

 ユニセフの報告書には、約30ケ国でほぼ2億人の女性が施術されているそうで、国によっては5才以下の女児に施すという悲惨さ。禁止して違反者には禁固刑や罰金が科されるようになっているものの、歴史が長いだけに撲滅には時間がかかりそうだネ。

 

 以上は得意の前振りなんだけど、先ほどラジオ放送大学で「文学批評への招待」で丹治愛(男性)さんの「フェミニズム批評(1)」を聴いていたら、クリトリス切除という言葉が飛び込んできたので新聞記事と結びついたわけだネ。トマス・ハーディの「テス」(未読)を素材にヴィクトリア朝の女性表象を講義していたのだけど、女性は性欲を持たない「天使」だという通念がイデオロギー化して女性を支配した結果、クリトリスを切除する手術を受ける女性まで現れたそうだ、イデオロギーの力はオッソロシイね!

 講義で紹介されたスーザン・ブラウンミラー『レイプ・踏みにじられた意思』によれば、レイプについて「男たちが作った」神話は4つの「格言」があるとのこと。

 ① すべての女はレイプされたがっている。

 ② 女にその気がないのにレイプされることは有り得ない。

 ③ 女の方から誘いをかけたのだ。

 ④ どうせレイプされるのなら、抵抗せずに楽しめばいい。

 

 伊藤詩織さんをレイプした元TBS記者・山口敬之もこの「格言」を使って自己弁護したのだろうけど、女の「はすみとしこ」がまさにこの男と同様の、というよりもっと下品なカングリで伊藤さんを傷付けたわけだネ。ボクの甘チョロイ女性観からすれば、女性がそんなエゲツナイ発想するわけないと思っていたので、「としこ」じゃなくて「としひこ」だと思いこんでしまったわけだネ。伊藤さんは山口某を準強姦罪で告訴したものの、刑事事件としては不起訴になってしまったのは、裁判官が「格言」を身体化した男性だったからだろネ、たぶん。民事では伊藤さんが勝訴したけど、山口がグズって控訴したそうだ。山口は「卑怯な男」という神話を上塗りしたようなものだネ。

 講義はまだ続き、坂田薫子「『ダーバヴィル家のテス』と「レイプ神話」」によると、《語り手》は「家父長的イデオロギー」を批判しているように見えながらも、テクストの書き換えをたどるとイデオロギーに浸潤された男性作家であることが暴かれる、と批判しているとのこと。他人事(ひとごと)じゃなく、自省の心を忘れることなく気を引き締めなければネ。もちろん文学研究としては、《語り手》の問題が刺激的で参考にはなるけどネ。