【読む・野球】松波太郎のエッセイ  「ロッテの澤村」が敗因  江川卓  小林繁投手

 お仕事を1つ仕上げたり、書いていただいた書評に対する感想を書き上げたりしたので、先般紹介したタロー(松波)さんのエッセイ集『本を気持よく読めるからだになるための本』(晶文社)の1つの章を読んでみたヨ。「沢村投手の刺鍼事故について」という章だけど、なかなか文章に工夫が施されていて作家づいている。新聞記事に至るまでのプロセス自体を読ませるのだネ。スムースに「巨人、沢村に謝罪 はり治療で機能障害」という見出しの記事が引用される運びは上手いけれど、ボクの記憶とは違っていて巨人が謝罪とは驚いたネ。沢村が自分の不調を球団のせいにしてゴネている、と事件を理解していたからネ。トランプと同類の存在で、己の間違いを他人のせいにして自分を守り続けているように、3歳児並みの精神年齢だと受け止めていたのだナ。それがまさか球団の方が非を認めるとは・・・

 新聞記事の引用の後は、それをめぐって患者とのやり取りを描写しながらも、はり治療を施術した球団トレーナーのミスという記事に疑念を呈して行く。自照性を欠いた沢村という存在に不信感と嫌悪感しか抱いてないボクとしては、タローさんの書き方は絶妙に沢村がゴネまくってトレーナーや球団のせいにしている様を暗示していると読んだのだけどネ。その絶妙な叙述を味わわねば、フツーの文章になってしまうのではないかナ。

 タローさんの筆(という表現は古くなったから「キーを打つ指」とでも言うべきかな)はさらにボクの心を見透かしたように、もう1人の「不信感と嫌悪感抱いてない」巨人の投手の新聞記事を引用する。1987年の江川の引退騒動のものだから、「嫌悪感を抱いていた」と記すべきだろう。巨人に入団するために小林繁という巨人の投手を阪神に追いやるという、自分のために他人の人生を犠牲にすることも憚(はば)らないというジコチュウの生き方は、絶対に許せないと思っていたのだナ。それが十数年後だったか、江川が素直に小林に謝罪した姿をテレビで見てからは、小林と共に江川を許せたのだネ。小林さんが亡くなったのは、それからしばらくしてからだったかナ。負け犬根性の阪神タイガースにカツを入れてくれた素晴らしい投手だったけど、自分をヒドイ目に遭わせた他人でも許せた、人間としても大きな人だったナ。

 それはともあれ、江川もはり治療を受けていたとは知らんかったナ。もっとも、江川の場合は沢村と違って他人のせいにしたり・迷惑をかけるという話ではなかったネ。むしろはり治療のお蔭で投手生命が少し延びたという記事だったネ、タローさんの興味もハリ治療つながりだったようだ。

 

 「ロッテの沢村」と記す喜びといったらないネ、(江川と同じく)巨人に執着して他人(他球団)を出し抜くという手口を使った極悪人が巨人を追い出され、いくら活躍したところで「巨人の沢村」ではないという敗北感・虚無感を味わうしかないという気持良さ! でも先日のCSの初戦で2安打2四球で敗戦投手になったのだから、純然たる敗北感だったネ。ロッテの首脳陣が、出来不出来の激しい沢村を信用し過ぎたための敗戦だったネ。ノーコンの沢村が四球を続けて満塁にして、3塁ランナーがいるのでフォークを投げられない(投げミスで捕逸が怖い)ので直球しか投げられずに、最後には甲斐に内野ゴロを打たれて決勝点を奪われた次第、サイコーの試合だったネ。ロッテの選手には可哀そうだったけど。

 野球に関心のないファミリーの皆さんにはナンノコッチャだろうから止めるネ。