【読む】ダンテ「神曲」  原武史『大正天皇』と「歴史のダイヤグラム」

 オルテガに続いて、現在読書中(というより中断中というのも多数あり)の本について記しておこうと思ったけれど、字数オーヴァーで控えたものがまずダンテの「神曲」。あまり読んだ人に出会ったことがないけど、学部時代に正宗白鳥を読んでいて何度か「神曲」に感動したという記述が刷り込まれていて、いつか読もうと思っていたのを実現しているところ。『和魂洋才の系譜』で売れた平川祐弘さんの(ラテン語からの?)新訳も出ているようだけど、ボクが読んでいるのは古書店の100円コーナーでゲットした壽岳文章さんの古典的翻訳。実に丁寧に注釈してくれるので何とか読めるけれど、主人公のダンテが現実のダンテに直結した注釈なので、私小説を読むように味気ない感じが抜けない。5センチくらいの厚さをまだ5ミリにも満たないところだから、読み終わったとしても再来年になるかも。

 これも広く売れた原武史大正天皇』も100円で入手したものだけど、大正天皇が国会で詔書を巻いて遠眼鏡のようにして覗いたというショッキングなエピソードをはじめ、天皇には脳が障害があったので早く退位したのではないかという問題を読んでみたかった。まだ半分近くまでのところだけど、結論は伏せて興味のある人は自分でどうぞということにしておこう。

 原さんは朝日新聞の土曜日に「歴史のダイヤグラム」というエッセイを連載していて、『大正天皇』にもむやみと鉄道の叙述が多い鉄道オタクなので、鉄道や時間表についてとても面白く読ませてくれる。だいぶ前に天皇(昭和?)を大宮辺りで爆破しようとした連中が、天皇の予定が変更されたために計画を中断したという記事があった。その時に用意した爆弾が、三菱ビルを爆破するのに利用されたと読んでビックリしたネ。何十人の死傷者が出たか忘れたけど、罪のないサラリーマンが日常の業務に励んでいる最中に、列車を爆破できるほど強力な爆弾を破裂させた罪は大きい。

 全共闘運動を頂点に反権力の運動が盛り上がった時代のノリのままに、爆弾闘争を日常生活に当てはめてしまった愚行を、犯人の1人が猛省して短歌集を出したと記憶する。若気のノリで不用意に為してしまう愚行には、くれぐれも注意してもらいたいネ。特に酒を呑んだ時にはネ、ヒトのことは言えないけど。