【読む】ハルキの小説論  《意識の流れ》という方法

 ハルキの『若い読者のための短編小説案内』(文藝春秋、1997年、1238円+税)は数年前にゲットしてあり、「ガラスの靴」や「静物」など作品選びに共感していたものの、あまり熱心に読んではいないままだった。先ごろ未読作品である丸谷才一「樹影譚」論を読んで興味を覚えたので、(その気にさせるところがハルキの上手さ)作品そのものを読んでみたくなった。丸谷は芥川賞獲った頃に受賞作品を読んだものの、若かったせいか面白いと思えなかったまま、その後は著名な作品を手に入れるだけだった。「樹影譚」は初耳の作品なので入手しがたいと思っていたら、地元で簡単に文庫をゲットできたので読むのが楽しみ。

 この勢いで長篇も読んでみようと思っているけど、丸谷才一と言えばジョイスの「ユリシーズ」の翻訳と註がスゴイ(集英社、1997年、単著じゃないけど)から、《意識の流れ》という方法を実践した第18章「ペネロペイヤ」だけでも一読してもらいたいネ。昔からプルーストと混同される傾向が続いているけれど、この章を読めば《意識の流れ》の追求の斬新さとプルーストとの差異が理解できると思うヨ。

 話を元に戻せば、上記の安岡章太郎庄野潤三の解説もハルキらしく面白く書かれているのでおススメだけど、ボクが遅いだけで皆さん既に読んでいるかもネ。