【見る】「100分 de メディア論」  大澤真幸・中島岳志・高橋源一郎・堤未果  小野正嗣  山本七平  望月哲男・亀井郁夫  ドストエフスキー  

 今「名著」の方は小野正嗣さんがフランツ・ファノン「黒い皮膚・白い仮面」を取り上げているけれど、あまり面白さを感じない。BLO(ブラック・ライヴズ・マター)運動が盛り上がっている現在、70年前の書にはそれほどの刺激も興味も覚えないネ。見るからに誠意のあふれる小野さんの好感度は高いけれど、日曜美術館のMCなどの専門外になると絶対値の小ささが露わになってしまうネ。ファノンは小野さんの専門内だけど、話題自体の絶対値が小さいから番組を見たくなる刺激が乏しいのは仕方ない。それより朝日新聞文芸時評(1月27日)で小野さんが取り上げていたアメリカのベストセラー長篇「ザ・ヴァニシング・ハーフ」(未翻訳)の方が面白そうだ。

 それはともあれ、2年前だったかの新年特別番組の「100分 de メディア論」を勧めたい。録画して時々見る(聴く)のだけれど、とっても面白い。大澤真幸他3名が、それぞれ推薦した本について実に面白く為になる議論をしているので、この充実感を皆さんにも味わってもらいたいのだナ。推薦本は以下のとおり。

 大澤  山本七平「『空気』の研究」

 中島  サイードイスラム報道」

 高橋  オーウェル「一九八四年」

 堤   リップマン「世論」

 本にまとめられていないか検索してみたけれど、本にはなっていないもののオンデマンド(どういうものかは知らない)で見ることができればイイなと思っている。これだけ充実した番組が埋もれたままだとすると、残念でたまらないネ。それぞれの本を読むだけでも、目からウロコの面白さを感じることができると思うヨ。イザヤ・ベンダサンの別名で「日本人とユダヤ人」のベスト・セラーを書いた山本七平をウサン臭いと思う人もいるだろうけど、大澤真幸が推薦するように信頼できる書き手だネ。山本の小林秀雄論も、掃いて捨てたいほどある小林秀雄に関する愚論の中でひと際光っているヨ。

(リップマンは著名ではないけれど、岩波文庫に入っているヨ。)

 

 それにしてもあまり面白くないものを再放送することはあっても、ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟」の再放送がなされないのはどうしたことか?! 亀井郁夫さんがとても面白い《読み》を提出しているのに、とても残念! 前半の2回は録画してあるのに、後半の2回は再放送を期待しながら果たせていない。昨夜も眠りながら聴いていたら、後半の続きを知りたくなってきたヨ。仕方ないから亀井さんと望月哲男(学生時代の友人でトルストイ戦争と平和」の新訳(光文社)を贈ってくれている)の2人が編集している『現代思想』(2010年)のドストエフスキー特集を本棚から取り出してきたところだヨ。ドストの専門家の望月クンと、モダニズムの専門家である亀井さんが対談を含めて編集しているので、とっても充実した特集号だヨ。