【ゼミ部】メイさんとの議論(平野啓一郎の作品)

ナオさんが(その他の参加者も?)メイさんとの議論の続きを期待しているので、昨夜やっと再読が完了して先ほどメイさんへの反論を送ったものをそままコピペします。

「>」印がメイさんの意見で「@」の後がボクの意見だけど、前半はコピペの失敗で奇妙な枠にハメられてしまったものの、意味はありませぬ。

 
きのう深夜、全部読み終わったヨ。 
結果、自分の読み方は変わらないネ、むしろ説得力を確信したくらいだ。 
長いので返答は個別にするヨ。 
 
 
 
---- may_ さんは書きました: 
> 先生、ご返信ありがとうございます♪!!! 
> テクストについて、先生とあれこれ意見を交わすのは楽しいですね!すごく刺激的で贅沢な時間です^_^ありがとうございます! 
> 
> 先生は、ヴィスコンティお好きですか! 
> 映画の中で、女装してマレーネのコピーをしたヘルムート・バーガーという俳優は、ヴィスコンティに気に入られてよく彼の映画に出ています。 
> 「家族の肖像」の、コンラッドの役もやってます。(ブルジョアマダムのヒモになった左翼くずれ) 
> 「地獄に堕ちた勇者ども」は、いかにも三島が好きそうな映画だなぁと思いますので、是非是非ご覧いただければと思います

@ 映画はあまり見ないけど、「ベニスに死す」がヴィスコンティだった気がする。
  ゲイに関心が無いので気持悪い感じだったけど、大好きなマーラーの曲が見事にマッチしているのには感心したナ。
  おススメの映画をテレビでやったら、必ず見るヨ。

> また、Tの変化については先生は賛同できないとのことですが、これまで作家に敬意を表するタイプの人間だったTが、未知恵に絡んでからは大野を憫笑するような態度を取
ったことに、大野自身が違和感を感じていることは、見落としてはならないような気がします。
> 仮にT自身は、自分の確信を提示しただけで変化してないとしても、大野がTの変化を感じているということは、大野を内的焦点化した語り手がわざわざ語っていることから
、何かが匂わせられていると思います。
> しかも、大野は、小説家ですので、一般の人より人間をよく見ていると思います。

@ やはりTが変化しているとは思えないナ、話が進んで行くうちに大野に対して遠慮が無くなるようには見えるけど。その点では何も「匂って」こないがナ、大野に人間を見る
目が有る無しは別にしても。
  
> それから、黒子ということですが、観客(読み手)からは物語の進行を補助しているのが見えているけれど、物語レベルでは、そのような働きは存在しないことになっている
、ということでしょうか。

@ 物語レベルでは、そのような動きが見えない(自覚されない)ものの実現されて行くということになると思う。

> しかし、語り手は、わざわざT一人だけイニシャルにしてその存在を浮き上がらせていたり、物語レベルでも、Tは自分の知っているすべての情報を大野に与えることもせず
含みを持たせていたり、先ほどの変化もふくめ、いろんな挙動から、未知恵と共依存の関係にあるのかと思わせるほど怪しげに浮き上がって見えてくるんですよね…。未知恵とT
、この二人の女性が依田をますます見えなくさせてるといいますか。

@ Tはイニシャルにされているのは存在を「浮き上がらせ」るためではなく、固有名詞が持つ存在の具体的イメージを消されているのだと思う。にも拘らずTが結果的に果たし
た役割が大きいということかな。もちろん積極的にそうしよう(依田の意向どおりにして上げよう)とするのではなく、積極的な未知恵と消極的な大野を利用して実現させてしま
ったのだと思う。

 @(前便メールより) Tが未知恵と共有しているものは、依田の希望を実現することだろうが、未知恵に共感しているとは思えないネ。依田には私淑しているだろうけど。
>
>
> また、先生の読みは、Tが依田に私淑している、依田の希望を実現することを未知恵と共有している、ということですが、Tと依田の関係についてもそんなに情報はないです
し、そもそも依田のプライベートな問題を小説にすることが依田自身の希望なのかどうかも、怪しいと思います。
> Tは「やってあげてほしいです」と言いましたが…
> 最後に、その意図には、依田夫妻だけでなく自分の意図も入っている、などと意味深なことも言っていたので。

@ Tと依田との直接的な関係は薄いだろうけど、依田に対する敬愛の念が依田のために働こうと思ったのだろう。「やってあげてほしい」と大野に言うのも、その気持からだろ
うし、自分の意図も入っていると言うのも唐突ではない。
  あくまでも小説にすることに拘っているのは、依田本人の意向が強いのだと思う、他の人物は小説という形式にはこだわってないから。
  ただし小説にしろ、依田のプライバシーに関わることを公表することが、メイの言うように依田の「希望」なのかどうかは不明確だけど、未知恵の「希望」だとすれば己の献
身を世間にアピールするためということになるのかな? 
面白くないけど。プライバシーの公表になるからこそ、依田は小説という虚構に仕上げてもらいたいと「希望」しているのだと思う。

未知恵も、あの小説の中の凉子とは似ても似つかない、ほんとうに、姉ですか?といった雰囲気ですし、言葉で語られた音声、テープ起こしされた文章、Tのメール、二人の会話
、言葉によるもの全てが、なんか怪しいんですよね。
> 逆に、信じられる事実を挙げると、依田が震災後になぜか活動停止していること、妻・未知恵が依田を車の中に置きっぱなしにしたり、自分の趣味の服装をさせ、その依田が
痩せこけていて、瞳が微動していることぐらいですよね…。

@ 「怪しい」ことばかりのテクストだからこそ、こうして議論が進んでいるのだろネ。
  依田の時間の揺れや震災への言及(こだわり)なども「怪しい」ものの、この2点が重要そうに思わせぶりに語られているにも拘らず、読みを整序化させないようにしている
ネ。

> この依田の扱い方は、Tの手の及ぶ範囲を超えてるような気がします。しかも、未知恵が来る前に、大野がTと二人だけで話をしていたのを知った未知恵は、表情を変えまし
たし。
> スティーブン・キングの「ミザリー」みたいに、実は依田は自分の熱烈なファンの女性に幽閉されて、薬漬けにされながら、作品を創らされてる、でも助けを呼べない、とか
だったら怖いなぁ…なんて想像しちゃいました。

@ 「ミザリー」も知らないけど、依田の扱い方はTの手の及ばないのはその通りながら、未知恵無くして依田が生存しにくいのも確かだネ。大野とTが2人だけで話していたこ
とを知った未知恵が「表情」を変えた点も、Tが未知恵に抱きこまれているわけではない証拠だと思うけど。

> 今、乳&子宮検診にきておりまして(四十過ぎると、マンモグラフィやらなんやら、面倒です)、テクストが手元になく、確認してないのにいろいろ書いてすみません!また
、長くなりました!しかし、面白い作品ですよね。
> 先生のご忠言に従って、これからは現代文学もちゃんと読むようにします。そして、「神曲」、背景が興味深いですね。ダンテさん、かなりの苦労人ですね…。
> また、どうぞ、よろしくお願いします!
>
> めい

 @ マンモグラフィで良かった、チンモグラフィだったらヤバイからネ。
   「神曲」は正宗白鳥の愛読書だったというので読んでいるけど、面白いとは感じないネ。