【観る】山下清の貼り紙  記憶の画家は写実がダメ

 一昨日だったか、NHKBSのプレミアム・カフェ(朝と深夜の再放送)で山下清を取り上げた番組の再放送をやっていた。朝はもちろんショーヘイたちの野球が優先されるので夜の再放送を見たのだけど、想定以上に面白い番組作りであり、作品も良かったので画集が欲しくなったくらいだった。人前でウケるので調子に乗ってキンタマの毛を見せびらかしたら、捕まって精神病院に入れられたというのは悲惨な話だった。

 印象に残ったのは医者(清の弟?)の話で、清の作品が昔の場面を再現できるのは、「左脳に障害があると右脳がそれを補うので、一般人が覚えていない特別な記憶を描くことができる」という説明だった。そういえば「レインマン」とかいう映画でも、清のような(ダスティン・ホフマン演じる)男が一目見ただけの光景を覚えているので、兄がその能力を利用してギャンブルで大儲けするシーンがあったナ。人間的交流ができない悲哀感も描かれていたと記憶するけど、清の場合と同じだネ。

 清が鹿児島に行った時、清に気付いた人が世話をしながら付近の絵を何枚か描いてもらったら、実景をジッと見つめたままで声をかけても反応しないくらい集中している。その割にはできあがった水彩も油絵もあまりデキが良くない。有名になってから清の後見をしていた式場隆三郎精神科医)さんの説明によれば、「清は目の前の光景を描いても面白く描けない。あくまでも記憶を想起しながら描くと素晴らしい」とのこと。

 ナルホド納得だネ。

(式場さんて、ゴッホの書簡集の原書を小林秀雄に貸した人かな? 小林の「ゴッホの手紙」に引用されている手紙を翻訳しているのは、小林自身だけどネ。)