【読む】宮下拓三『徒然草全読解』  島内裕子  西尾実(補足)

 このところ『昭和文学研究』に書いてくれた滝口明祥さんの『シドクⅡ』の書評を、学会員でない研究者仲間にコピーを送る作業で忙しくしているヨ。読みたい人には誰にも送るから、請求しておくれ。

 小林秀雄について啓蒙的な本を妄想している最中に、「徒然草」第40段「栗ばかり食べて米類を食わない娘」についての小林の批評がどう解釈されているのかが気になり、「徒然草」の研究書を読みたいナと思っていた矢先に暑さ10㎝もありそうな大著が届いたヨ! ウソみたいな話だけど、宮下さんが右文書院から出した14,300円もする『徒然草全読解』ですぐに第40段の箇所を拝読したヨ。さすがに信頼する宮下さんの「読解」だからこれだけ読めば済んだものの、他の研究・解釈にも言及してくれているの面白かったネ。

 学生時代、教職の単位なので仕方なく受講した安良岡康作さんの名も出てきて、微妙な気持だったネ。学大の名誉教授(だった?)なので悪くは言えないけど、「徒然草」評釈では研究史に残る業績を残したらしいものの、教科教育は専門外らしく恩師の西尾実の理論(?)を受け売りするだけの、底の浅い授業だったナ。授業に出ない学生をイジメたがっていたけれど(ボクもチョッとイジられた)、テキストを買えば単位をくれたので気楽だったネ。

 ブログで何度もダメ出しをしてきた島内裕子の「読解」も紹介され、「徒然草」のテクスト全体の構造を読もうとする島内の意図を宮下さんは一応評価したいと言っていたものの、意図(思い付き)だけなら誰でも言えるよネ。問題はそれをどう説得的に論じられるか、で能力が問われるのだから。放送大学で昔チョッとかじった吉田健一だけで何とか近代文学の講義をゴマカせる、という思いつきで走ってしまうから赤恥をかいてばかりいるのだネ。宮下さんの手紙によれば、島内裕子の「徒然草」論は某氏からクソミソにたたかれているそうだけど、専門でもダメ出しをされているのだネ。でもツラの皮は厚そうだからダイジョブだろネ。

 

 大事なことが後になったけど、宮下さんは桐原書店の教科書を立ち上げた時の同志で、その「読解」力のレベルの高さで大学教員の解釈の薄さを徹底的にやり込めることもあったスゴイ人。バブルがはじけて桐原が困りきって外資系会社に身売りした時に、編集委員から去ったのでそれ以来まったく音信不通だった。その十数年を埋めるように大著を贈ってくれたので嬉しいかぎり!

 大学・高校の図書館には無くてはならない研究書だから、公費で具えておかないと困ることになるヨ。