【読む】『昭和文学研究』第83集  中村三春・松本和也・押野武志・吉田恵理  勝原晴希

 『シドクⅡ』の書評が載せられた『昭和文学研究』の表紙もコピーして送ったら、この第83集を入手したいと人もいたけれど、学会員でないと難しい気がするナ。学会費7000円を払うと年に2冊刊行される会誌が送られてくるので、ボクが会務委員長だった時には1冊を3500円で売るという考え方もあったけど、今はどうしているのかな?

 それにしても第83集は目次を見れば欲しくなるのが理解できる、分厚いから質量共に充実しているのも明らかだし。特集が「饒舌体再考――口語体文学の可能性」というのだから魅力満載の感じがするよネ。中村三春・松本和也押野武志というラインアップを見れば、この特集のレベルの高さは一目瞭然。これに最近進捗極まりない吉田恵理が加わっているのだから、稀に見る特集だヨ(他の2人は未知)。

 立教院の非常勤の頃に知ったエリちゃん(吉田さんというと別人の響きになる)の論文から読んだけど、作品も知らない小熊秀雄論だから教えられることばかり。引用されている小熊の詩を読んでもツマラナイこと限りなしだけど、論文自体は納得しながら読めるのが素晴らしい。参照されている論文に、勝原晴希編著『「日本詩人」と大正詩ーー〈口語共同体〉の誕生』(森話社)収録の黒坂みちる「『日本詩人』の新詩人たちーー内部からの反逆」が紹介されていたので嬉しかったネ。

 草稿段階から読ませてもらっていた論文だけど、学会誌の論文を構築するのに役立っているとはさすがにミチルちゃんだネ。学大学部生の頃から目だった能力を発揮していた人だけど、ボクには興味も理解力も無いモダニズム詩にのめり込んでいたほどの異才ぶりだったネ。後輩向けの授業をやらせたいネ、後輩への刺激にもなるし。

 論文が収録されている大著の編著をしている勝原さんの巻頭論文も未読だったので、これを機縁に読み始めたけどさすがに実力者の論だネ。質量共にハイレベルの業績がある人なのだけれど、昔から10回以上本にまとめるように勧めたのに、空返事ばかりで未だ1冊も出してない、惜しい人だヨ。詩歌研究が本業だけど、小説論もたくさん書いていてハルキでも1冊書けると言っていたのにネ。世の中、クダラナイ研究・批評本が氾濫していて腹が立っているのに、勝原さん(ふだんはカッチャんと呼んでいる)のような優れた書き手の本が出ないのは悲しいヨ。

 カッチャん、出せヨ!