【ヒグラシゼミ】泉鏡花「尼ケ紅」  内容・形式共にヒドイ作品  発表のイー君はガンバッタ!  一柳廣孝他編著『怪異と遊ぶ』

 ナマ参加者はヒッキ―先生とボク以外に4名で、オンライン参加はミチル姐さんと法政大院生が2名といったところ。 

 とにかく長い上にマムシの肝を呑んだヤツが吐きだそうと思っても果たせず、マムシの種々の妄想に囚われ続けてついには自身がマムシになるという、荒唐無稽のバカ話で読むのがツライ! こんな作品を書くヤツもヤツなら、読んで楽しむヤツもヤツで発表者のイー君がその1人。スキャンの具合が悪くてテクストが読みにくい上に、内容が気持悪くて末尾まで読みきれないまま参加したヨ。発表・議論を聴きながら全集で末尾を読んだら、主人公の大尉が「神経衰弱」から治った(らしい)後の回想談だったという設定の上、心理的に大いに大尉を悩ました寺の尼の所為が(美女を妻に持つ)大尉に対する嫉妬心からだった、というイイカゲンな落とし方には呆れるばかり。内容も形式もヒド過ぎるので、鏡花のファン・研究者には許容できてもフツーの読者であるボクには許せない・耐え難い作品だネ。

 

 それでもイー君は先行研究のまとめや読解の仕方を、レジュメ15枚も用意したのだから驚いたネ。よくもこんな作品についてたくさんの先行資料(ほとんどが作品論ではない)を探し出したり、デリダアガンベン等の理論の吸収を《読み》に利用したりしながら、独自の作品理解を構築しようとする姿には敬意を表することができたネ。論文化される前に詳しいことは書けないけど、トラウマ、PTSD、モーニング・ワーク(喪の作業)などの術語を先行研究などを引き継ぎながら《読み》解こうとしていたものの、なかなか一筋縄ではいかない印象だったのは仕方ない。ボクもくり返しツッコミ役を務めたけど、それだけ難解(ボクからすればイイカゲン)なテクストだからネ。

 

 ついでながら青弓社から出た一柳廣孝さん等の編著による『怪異と遊ぶ』(2400円+税)を紹介しておくヨ。一柳さんからは「怪異」シリーズの編著書を贈っていただいているものの、「怪異」自体にまるで興味のないボクは『怪異とは誰か』(青弓社、2000円+税)では三島を論じている松下浩幸さんや火野葦平の珍しい作品(?)を論じている構大樹さんくらいしか読んでない(龍之介を小谷瑛輔さんなどが論じているけど龍之介自体に関心がないし、谷口基さんは懐かしい人だけど論の対象である川村孤松などまったく知らない)。

 今回の「怪異と遊ぶ」もオドロオドロシイ表紙のマンガ(蒼木こうり)を見ただけで捨ててしまおうかと思ったものの、目次を見たら他ならぬイー君(今藤晃裕)やバンセイ君(構大樹)が鴎外などの論を載せているので捨てるのを思いとどまったくらいのものだネ。ボクはプロレス同様に「怪異」も嫌いだけど、それぞれ好きな人もいるのだから紹介してもムダにはならないだろネ。