【観る】ゲルハルト・リヒターの絵画  ゾンダーコマンド(ナチ協力者)の戦後の生き方  「そして飯島君しかいなくなった」(演劇集団「円」の公演) 

 以前ブログで紹介したゲルハルト・リヒター展(国立近代美術館は終了して10月15日からは豊田市美術館で開催)を、朝日新聞の夕刊(9月29日)の一面で特集していたヨ。最近の代表作「ビルケナウ」(アウシュビッツと言った方が通じやすいネ)の大きめの写真があるので切り抜いておいたヨ。ただ見るだけで迫力のある美を感じる抽象絵画だけれど、絵具で塗り込められる前には虐殺されたユダヤ人が焼かれている写真の模写も紹介されているので貴重だネ。元になった写真を撮ったのはユダヤ人協力者「ゾンダーコマンド」だそうだけど、彼らを素材にした演劇の録画がBSプレミアムで放映されたことについてはだいぶ前に記した。仲間を焼くなどナチに協力する代わりに自分は生き残ったゾンダーコマンドたちの戦後を、過去を秘めたまま生き続けようとする者と・過去を引きずったまま苦悩する者との対照を観客に突きつけた作品だった。

 昨夜のプレミアムシアターの前半に放映された、演劇集団「円」の公演の再放送「そして飯島君しかいなくなった」も似たような設定で迫力あったネ。家族が犯罪を起こし合人たちが集まって「被害者の会」として活動しているものの、実は加害の意識を紛らわせるための集まりであることが暴かれていくストーリーで魅入られたネ。前半の集まった家族たちの過剰な明るさが、実は演じられているものでしかないことが、不可解な登場人物3人によって暴かれているプロセスには息を呑んだネ。罪を意識しないように平穏に生きて行こうとする人たちの欺瞞が暴かれるという点では、ゾンダーコマンドが過去の罪を意識下に閉じ込めて生き続けようとするドラマと同じだネ。

 オンデマンドで見ることができる人にはおススメだけど、本になっているなら脚本を読んでも迫力は伝わってくると思うヨ。

 

 退職後の楽しみにしていた1つ、『現代戯曲大系』十数巻を読めるのはいつになるのだろう?