【読む】新しい川端康成像?  34本の書きおろし論文集

 仁平政人・原善(編著)『〈転生〉する川端康成』(文学通信、2700円税込)を旧知の原さんから頂戴した。川端論にしては「引用・オマージュの諸相」の副題から期待できるように、全体としては昔から研究者のレベルが低いと言われてきた川端論としては画期的な試みかもしれない。なにせ30人以上の研究者が執筆している上に、好みである詩人・作家の作家・小池昌代もエッセイを寄せているのだからタマラナイ!

 その小池昌代の「左腕」と川端の傑作「片腕」を一緒に論じる人(仁平)もいれば、これも好きな小川洋子と川端を双方ともに詳しい高根沢紀子さんが括って論じているのだから、川端を読んでいる余裕の無い身ながらそそられているヨ。その他例示しているとキリがないけど、目次にはガルシア=マルケスはじめカズオ・イシグロ莫言(中国のノーベル賞作家)などの海外作家、荻野アンナ吉本ばなな・綿谷りさ・松本清張清水義範多和田葉子・川上未央子等々の日本の作家名が上げきれないほど並んでいる。

 34本の論文やエッセイを収録して2700円ならお買い得の読書ができる、絶対おススメだヨ!

 

 「臨床文学論」という分野を切り拓いた学大ハカセ(近藤裕子さん)は、以前は川端研究のトップランナーの1人だったのだヨ。今回の本に実力のあるハカセが臨床文学論の立場から川端を論じたものが載っていれば、より魅力的な本になったとは思うネ。臨床文学論を確立してからハカセは川端を論じてないみたいだから、注文されても書かなかっただろうけどネ。