先日、新書の出版の仕方はヒドイと記したけど、あくまでも伝統のある岩波と中公新書は別ネ。こちらは逆に専門的すぎて手に取りにくい傾向があるかな。
昨日あまり見ない書棚に平野啓一郎『本の読み方 スロー・リーディングの実践』(2006年)というPHP新書を見つけたヨ。たぶん昔七七舎で100円でゲットしたものだろネ。平野は小説も面白いけど、批評も書ける人で文庫の評論集に教科書に使える文章があるか探したこともある。一部に目を通したけど、啓蒙的にハードルを下げた書き方をしているけど、「金閣寺」論は「100分で名著」に再説している禅海和尚の〈父性〉が説かれていて面白かったネ。
その他、「こころ」「高瀬舟」「伊豆の踊子」など著名な作品や、かふかや金原ひとみや平野自身の作品、そして何とフーコー「性の歴史 Ⅰ」まで「スロー・リーディング」の実例として解説されているヨ。チョッとおどろいたのは、「こころ」の解説で
《ここではその疑問が、なぜ、あえて兄によって発せられているのだろうか? そんなのたまたまだと決めつけず――結果としてたまたまということはもちろんあるにせよーーそれを考えてみる手間を惜しまないようにしよう。常に「なぜ」と考えてみることは、スロー・リーディングの基本である。》(111ページ)とあったのだネ。
最初の『シドク』の前書きに記したことと同じ趣旨だからネ。この前書きは1996年に書いたわけだけど、似たようなこと(そして大事なこと)は気の利いた読み手なら気づくということだネ。そう言えば、『シドクⅡ』に対する滝口明祥さんの書評を送った返信の中に、『シドク』の前書きのこの言葉を思い出したと言ってくれた人がいたヨ、なんとも嬉しい読者だネ。