29日は「いのちの初夜」

「鯉」は期待通りのレジュメが出て、突っ込んだ議論ができた。
サッコ君は4時5分になってもレジュメを記していたので(研究室)、強権的に止めさせた。
こんなことをやっていると、卒論提出日に遅れて(1分でも)提出が1年延びることになる。
仕上げたいのは分かるが、決められた時間に(途中でも)出すのが先決! 何も卒論(やレジュメ)に限らない。
ジコチューになって、仕上げるまで他者を待たせればイイと考えるのは、大間違い!
自分を特化(特権化)するのは間違いのモト。

さて、サッコ君のレジュメは、後半は「私」の脚色であって、事実ではないという読み方。
プールに魚がいるのはオカシイ、異種の魚が群れをなすのもオカシイ、等を根拠にしたもの。
プールに魚がいてもオカシクナイのが当時の状況ではあろうが、鯉の後をハヤやメダカが付いて泳ぐというのはサカナ君(昭和ゼミの夏合宿先の館山博物館長)に聞けばオカシイのはすぐ分かるが、虚構を旨とする文学テクストの場合は素直にそのまま受け取るのがお約束。
田久保英夫が「深い河」で芥川賞を受賞した際に、重い馬の死体を1人で処理できるはずがない、と議論になったのを記憶する。
サッコ説は新しいものの、それによって作品の面白さは却って減じてしまうのではないか?
ミズノ君はさすがに用意周到で、青木の鎮魂を読み点が新しく説得された。
ミズノ君を下級生のミズノ(ユッコリン)が突っ込むという面白い場面は笑えた。
とまれレポ二人共、井伏テクストの緻密な所を良く読み込んでいて、さすがに上級生! 
単に学年が上級だというだけでなく、読みも上級という印象でした。
院生のセンちゃんが参加しても甲斐があった、という演習でした。

次回は北条民雄いのちの初夜」、つい最近まで法的にも差別されていたハンセン病を対象にしたテクスト。
今や日本を代表するハンセン病関連文学の研究者・荒井祐樹クン(学大から東大院進学、博士号獲得)は、イチロー先生の授業で小林秀雄の「いのちの初夜」評を知り、それが縁で今の研究を始めたとのこと。
博士論文をまとめた著書は研究室にあります。