100分de名著  奥本大三郎  「ファーブル昆虫記」

「100分〜」はイイ番組だが、石井さんの「遠野物語」が終わったと思ったら、今度は奥本さんの「ファーブル昆虫記」だというので思わず苦笑してしまった。
ファーブルは、重要な読書体験として吉本隆明資本論と共に上げていたので、個人的にも「気になる」本ではあるがまだその一部しか読んでない。
世界の名著の一つに違いないから、この番組でも取り上げられるのは自然だし、解説者としては奥本さん以外にはありえないのも当然ながら、石井さんのすぐ後というので笑いが洩れたのである。
前に記したように石井さんはついこの間までの同僚だし、奥本さんは歴史に残る同人雑誌『季刊現代文学』で一時期ご一緒していた方である。
読売文学賞を受賞した『虫の宇宙誌』の著者だ、と言えば思い出す人もいるやもしれない。
子供の頃は魚取り(釣り)のみならず、蝶採集に明け暮れていた私も、中高生の頃に大事にしていた日本の蝶図鑑について、奥本さんが著者の文体まで評価していたので、レベルの違う御仁だとビックリした記憶は薄れない。
現代文学』は領袖の饗庭孝男さんを始め、優れた文体の持ち主の集まりでもビックリさせられていたものだが、図鑑の著者のみならず奥本さんご本人の文体も素晴らしいものがあり、新聞で「虫の命でも大切にせよというヒューマニスティックな観点から、昆虫採集を批判する人がいるけれど間違っている。」とハッキリ書いていた記事には感動したものだ。
珍しい虫を発見し、それを捕えようとする時のトキメキ感の大事さを、説得力をもって説いていたのを忘れない。
その奥本さんが大学教員を主人公にしたクダラナイ小説を書いたという記事をソバ屋の週刊誌で読んだ時は、ご本人のためにもザンネンな思いがしていたので、今度の番組出演は本道に戻ったようで嬉しかった。
同じ番組だから曜日と時間は変わりないので、ぜひ引き続きお楽しみ下さい。
伊集院光のツッコミの軽妙さも味わえます。