桐原書店・高校教科書

退職すると時間にトテツモナイ余裕ができる、と勘違いする向きも多いだろうと察している。とんでもネエ!
例えばこの数年間ご恵贈いただいた著書の礼状を書かねばと思いながら、果たせずにいるのが一番の気がかり。
頂戴した時に一部を拝読して(勤めていると全部を読み通す時間はない)感想かたがたお礼を書こうとしながら、書く余裕を持てないまま暫く放置せざるをえないと、次に書こうとする際には書くべき感想がアヤフヤになり、読み直す時間がないまま再び放置せざるをえなくなるという繰り返し。
「私のような者」にも著書を恵んでくれる気持に対する感謝の念を強く抱いているからこそ、お礼の気持を伝えたいのだがそればかりに集中している状況でもないのが実情。
家内の整理は速度は落ちたものの少しずつ進めながら、当面の仕事として今年に入ってから再起動した教科書の編集という作業に追われている、ということは記しておかないと単に怠けていると誤解されかねない。
この仕事も退職したら存分に打ち込めると思っていたら、5月頃までは退職にともなう残務整理に時間を取られて思うようにできなかった。
前にも記したはずだけれど、太宰の作品論という依頼原稿をお断りしても、教科書の仕事は手を抜けないということだネ。
最近やっと在職中に活躍できなかった罪滅ぼしの気持でガンバッテいるつもりだが、結構タイヘンな仕事なのであります。
新しい教材(小説や評論)の候補を探したり、全編集委員が集めた教材案を読んで評価・採点したり、高評価の教材案を会議で検討したりで想像以上に時間がかかる(会議は楽しいけれど)。
桐原の教科書は十数年前に立ち上げた時にはいきなり売り上げベスト・ファイブに入る勢いだったのだけれど、その後は漸減して行ったあげくバブル崩壊に際して外資系会社に身売りされたら激減する勢いは止まらなかった。
国語の教科書なのに会社名が「ピアソン桐原」じゃ売れるワケねぇサ。
こちらもヤル気失くしていたら、昨年初心を貫く意欲的社員たちが「ピアソン」に縁切り状を叩きつけて(現場は見てない)独立したので、当方も俄然ヤル気を取り戻したというワケ。
現代文の編集委員の中、高校教員のメンバーはかなり代わったものの、大学教員の方は亀井秀雄さん(前橋高校の大先輩という関係を言うと皆さん驚くが)始め、サッチャン(小林幸夫)と大橋毅彦さんで変わりなし。
ただ立ち上げから一緒で会うのが楽しみだったシュンテン(花田俊典)を病気で亡くした淋しさを感じる時もあるけれど、このメンバーだから議論がとっても面白い。
古典の方も兵藤裕己や長嶋弘明という大学後輩の優れ者たちが変らずに担当しているのだから、スタッフからいえば桐原が他社に劣るはずはない。
営業の方は社員に任せるとして、あとは我々の(特に退職した私の)意欲しだいとなればガンバンベエ(頑張るゾー)とやるしかないワケさ。
立ち上げた時から宇都宮大学東京学芸大学の卒業生が現場で採用してくれたお蔭でそれなりの結果(数字)が出ていたのだけれど、ピアソンがくっ付いて落ちた数字をこれから何とかしたい一念!
教科書を採用してもらいたいだけでなく、教材に対する感想を寄せてもらえるとより良いモノに作り変えることができるので、皆さん宜しく頼みます!

(追伸)現在も27日の会議に向けて、膨大な評論教材候補作を採点中。暑いなどと言っていられない。