プーシキン・望月哲男訳『スペードのクイーン・ベールキン物語』  太宰ファンには特におススメ

昔からのおススメ本であるバフチンドストエフスキー詩学』の翻訳者として刷り込んできた望月哲男氏から、最新の訳書を贈っていただいた。
プーシキンといえば太宰が大好きな作家で、「桜桃」の最後の場面《食べては種を吐き》のルフランが、「ベールキン物語」中の「その一発」のパロディだということはピースの又吉でも知っているだろう。
「その一発」という題は昔の名訳・神西清の訳し方だが、望月訳では「射弾」となっている。
慣れないせいか表題はピンとこないものの、望月訳で久しぶりにこの作品を読み始めたら、以前と比べてスンナリ読めた気がして驚いたものだ。
光文社古典新訳文庫が読み易い新訳を出し続けていることは知っていたが、これほど読み易いとは信じられなかった。
もちろん望月氏の文学的センスの良さと、ロシア語力のみならず日本語力の高さの成果なのだろうけれど、一読して自分で確認しながら楽しんでもらいたい。
特に太宰ファンならプーシキンを読まないと太宰にバカにされるから、この新訳から始めるとイイ。
「射弾」という訳題はともかく、従来「スペードの女王」だったものを「スペードのクイーン」としたのは内容にピッタリで、望月氏の手柄である。
プーシキンが済んだら、望月訳でドストエフスキートルストイを読むべし!
ドストエフスキーというと最近では亀山郁夫という名を想起される人が多いと察せられるけれど、望月氏との対談でも露わなように、ドストエフスキーに関しては望月氏がプロで専門家なら、亀山氏はアマチュアのレベルでしかない。
いつかのNHK・BSテレビで亀山氏がロシアのモダニズムの専門家だと知って驚いたが、特集していたモダニズム絵画で亀山氏が入れ込んでいた作品は素晴らしかった。
この特集番組については、ブログに記したかもしれないけど記憶が定かでない。