開高健

1年生の青木クンのデビューです。終了後の皆の感想のとおり、よく頑張りました。「レジュメの体をなしていて良かった。」という感想がハマっていました。最近、近代文学づいているサトマンも<読む>姿勢が全面に出ていて評価できましたが、短いテキストで意欲に十分応える完成度に欠けていたのが致命的でした。
 山崎サンの「匂いがよく出てくる」という指摘を生かせると面白いでしょう。匂いは原初的な感覚で、登場人物たちの世界の捉え方が全体性を欠いていることと関連付けてもいいかも、と思いました。感想で言ったように、「ぼく」の仕事が新聞社の校閲部ということも、文字を一字一字に解体して捉える職業なので、世界(記事=文章)を全体として捉えられない「ぼく」の在り方と無関係ではないと言っていいかもしれません。
 パンパンのリンチの場面は田村泰次郎肉体の門」を想わせましたが、未読のヒトは読んでおくといいでしょう。サナエちゃんだったか、「翻訳文みたい」という感想は開高健の文学(文体)を直観的に捉えた言葉に聞こえました。初期にはアレゴリーが多かった開高が、世界を捉えよう(写そう)と試みたものの、結果は現実まで届かなかった、というところでしょうか。