黒田清輝展

カラヴァッジョばかり頭にあったけれど、黒田清輝もなかなか現物を観る機会が無かったので行きたいと考えていた。
桐原書店は新宿にあるので竹橋(と思い込んでいた)でカラヴァッジョを観てから行こう(会議は3時から)と思っていたら、何と会場は上野、東京国立博物館平成館だった。
幸い夜眠れたので早目に出かけられたけれど、上野公園の花見客も考えると混雑すると心配したのに意外にも空いていてジックリ観ることができた(前を通ったカラヴァッジョ展の国立西洋美術館も空いていた感じ)。
とにかくものすごく多量の作品が展示されているから、これから行く人はあらかじめ観るものを限定しておいて、観たいものから先にしないと疲れて見切れないと忠告しておきたい。
ボクは最初に置かれた「婦人像(厨房)」に見入ってしまってから丁寧に観たために、集中できる鑑賞限界時間の1時間(だと思う)過ぎた頃には半分も残していた感じだった。
だから有名な「湖畔」を観るころには疲れ切って感動するパワーが残っていなかった。
ましてや以前から気になっていた「智・感・情」という裸婦三体は最後の会場だったので、インパクトが弱かったのはザンネンだった(朱色の裸婦の輪郭線が気になったままだけど)。
小林秀雄が「西行」で、「新古今集西行を読むと際立っているが、山家集で読むと全部西行だから際立ったものとして感じられなくなる」という意味のことを記していたけれど、清輝の作品もどれも優れているので眼が慣れてしまうと特別な絵を見ても感動が薄れてしまうようだ。
展示作品が多いのは師のコラン(ツマラナイ画家だ)や清輝に影響を与えたミレーやシャヴァンヌの作品も展示されているからで、美術史的にはベンキョウになるけど時間がかかる。
清輝自身が師として育てた(というより反発の対象だったかも?)青木繁の「日本武尊」も展示されていたけれど、メチャ面白いのは清輝が美大教授の時には青木以外にも萬鉄五郎熊谷守一といった独特な画家たちがいたということ。
萬(よろず)や守一(アリや雨粒まで描いた画家)は展示されていないけれど、萬から逆影響を受けたような清輝の作品もあったりして(題は忘れてしまったけれど、花だったか無闇と赤線が目立った絵)楽しめた。
ともあれこれだけ多量の清輝展は今後あまり期待できないので、今のうちにどうぞ!