【読む】石井正己『震災と語り継ぐ』

 ベンゾー(石井正己)先生が震災について講演した記録をまとめた本を、三弥井書店から出版した(2800円+税)。副題は「巻頭大震災の記録と東日本大震災の記録」だから説明は不要だろうし、講演記録そのままだからとても読みやすい。全4章に整理されている中の第Ⅳ章は「柳田国男宮沢賢治井上ひさしーー文学の力」と題されて3本の講演が載せられている。

 早速「宮沢賢治を食う!ーー「グスコーブドリの伝記」」というのを読んだら、ベンゾーさんのテクストを細やかに読み取る感性と能力に驚いたヨ。柳田の「遠野物語」について緻密な注釈で圧倒されたことはあるけど、文学テクストをこれほど丁寧に読み解いている賢治論は類例が無いかもネ(あまり賢治も賢治論も読まないボクが言うのも変だけど)。「フランドル農学校の豚」という作品について、以下のように論じてます。

 《この童話は、農学校で実験的に飼育されている豚の気持ちになって、豚の立場から飼育を見つめているのです。(略)こういう世界を描いた作家は他にいません。人間が豚を飼育するのは当たり前だという人間中心主義的な価値観ではなく、豚の気持ちになって考えてみるのです。こうしたことができた作家は宮沢賢治だけでしょう。それは、人間の食生活そのものを問い返すものになっています。》

 これだけでもボクの感銘が伝わればいいのだけど、自分で読んでみておくれ。