【状況への失言】森鴎外の犯罪(兵隊数万人の殺人)  鴎外と東大と陸軍のクソ意地  「フランケンシュタインの誘惑」  

 一昨日夜の「フランケンシュタイン」(再放送)はとても面白かった。数日前に途中から見て再放送を期待していたのは、鴎外が深くからんでいたからだネ。この番組は科学的テーマを取り上げることが多いのだけど、今回は脚気(かっけ)の原因は何かということで、鴎外(と陸軍)は疫病説を固持し続けることによって陸軍の兵隊を数万人死に追いやる結果となった。海軍はいち早くパン食を続けていたために脚気で死ぬことはほとんど無かったものの、陸軍では鴎外の考えもあって米食(白米)を継続したために日清戦争でも日露戦争でも、それぞれ脚気が原因で死んだ兵が1・2万を超えてしまったという。鴎外は留学中のドイツからも・帰国してからも米食論を主張し続け、脚気の原因が細菌だと説いていたのは学部生の頃から知っていたけど、その論文は読んだことはないネ。

 鴎外は米か麦(パン)かという実験を試みたものの、1週間だけの実験で差異はないという結論を出して米食説を固持し、パン食を主張した高木兼覚を頭ごなしに否定したそうだ。たまたま若き鴎外が留学中にベルリンで師事したコッホ(北里柴三郎も同時期)が来日し、鴎外に細菌以外の原因の可能性を暗示したものの無視したのだから頑迷と言うほかない。一方の高木は鴎外と陸軍に恐れをなしたものの、海外にも米食を続けると脚気になる旨の論文を発表していた。脚気その他の症状(壊血病やくる病その他)が細菌ではなくビタミンの欠乏だと判明した後のことながら、高木の論が認められてノーベル賞の候補にも上げられていたというのだから、笑うに笑えない話だネ。

 笑うべきは己の考えに固執した鴎外(と東大医学部と陸軍)の頑迷さであって、その後も鈴木梅太郎という学者(東大農学部)が米ぬかを摂取していれば脚気にならないと主張したところ、これも農学部を蔑視していた医学部の教員たちが完全に否定し去ろうとしたそうだ。鈴木に対して「米ぬかで脚気が治るなら、ションベン飲んでも治るだろうヨ!」と言ったというのだから、医学部(や法学部)の誤ったプライドが科学の進歩を阻んだ事例と言えるネ。

 ビタミンBの発見(高木の論文に示唆された海外の研究者による)がなされた後も、死ぬまで鴎外は自説の誤謬を認めなかったという。もちろん内心ではビタミン説を認めざるとえなかったものの、言葉には出せなかったのだと思うヨ。いかにも鴎外らしいのは、完全無欠な自己像を堅持しつつ不備の原因は外(細菌)にあって自己の内(ビタミンなど)には無い、という思い込みから脱することができなかった点だネ。典型的な秀才タイプで己の過ちを絶対認めないクソ意地で自説を押し通してしまう点では、ケツの穴の小さい人間の代表だネ。

 「舞姫」はじめとする文学的出発に際して文語(雅文体という評価もある)を選んだ(逆に言うと先行する「浮雲」の口語体を拒否した)鴎外は、明治40年前後の国語表記をめぐる論争でも文語を固持しつつ、会議に臨んでは開口一番「今日自分は陸軍を代表している」と切り出したというのだから笑わせる(情けない)。そのくせ同じ頃に小説執筆を再開した時は完全に口語体で書いたというのだから、メンドクサイ人間だネ。だから嫌いサ、ということかな。

 (この番組をおススメしようと思っていたら、昨夜再々放送をしていたので間に合わなかったヨ。)