「東京新聞」文化面  朝日新聞との差異  近藤富枝

東京新聞」は政治社会面では朝日よりも闘っているし信頼できる感じを受けたけれど、文学はともあれ演劇・美術などの文化面では朝日が圧倒的に他紙をリードしているのは一目瞭然。
扇田昭彦が専属評論家として演劇評を充実させていた伝統を持つ朝日は、現在でも舞踊や歌舞伎の専門家も含めてかなりの紙面を使っているので勉強になる。
朝日の書評欄は逆に紙面を使い過ぎてショーモナイ本の紹介も少なくないけれど、書評欄は他紙も同様だろう。
そもそもクダラナイ本が多すぎるのが最大の原因なので、書評欄を比べても仕方ないのかもしれない。
文芸時評は以前記したとおりで、朝日は蓮実重彦小森陽一が低調にしたのをその後回復しつつあるとはいえ、昔の江藤淳・最近の島田雅彦のような信頼度は期待できない。
東京新聞文芸時評は読めなかったので比較できないけど、今どきの同時代文学は活躍中の優れた作家にしか解説できない難しさだから、何処も大きな差異は無いだろう。
印象深かったのは、朝日でツマラナイ連載をしている瀬戸内寂聴東京新聞の夕刊では「縁の行方、今」という連載(?)をしていて、これがメチャ面白い。
読んだのは「近藤富枝②」という記事で、寂聴と富枝の関係がハンパなくオモシロい。
良家のお嬢様だった富枝が、家の零落・両親の離婚のために寂聴がいた女子大寮に入ってきたのだという。
学祭などでは富枝が創作・演出して主役がのちの福田恒存夫人、他の演者は寂聴や阿刀田高の姉だったとうのだから、東京女子大は永井愛たちよりも前から演劇熱が盛んだったということだ。
谷根千」で有名な森まゆみは富枝の姪だというのだから、世間はホントに狭い。
森まゆみは「鴎外の坂」をおススメしたいけど、近藤富枝文学史の授業でも勧めたこともある「田畑文士村」「本郷菊富士ホテル」「馬込文学地図」のどれも面白い(中公文庫にまだあるかも)。
文学史を時間の流れで読むのではなく、空間を区切って読むという方法のオモシロさだネ。

東京新聞の文化面というと昔から有名なのは「大波小波」というコラムだけど、これはまだ健在の模様。
このコラムは一時代前の昭和文学会のツワモノ達が書いていたことがあると聞いたことが(勝又さん?)、文学観の古さはともかく物知りだったよネ。
意外だったのは美術評で、9月23日の夕刊には朝日よりも多めの字数で工芸について詳しく論じていたこと。
朝日の美術評は大西赤人という人が出しゃばり過ぎる印象が強く、マイナス。