高田知波先生の講演  「雪国」  1月の予定

(途中まで記したままだったのを完成させました。)

前回参加した人は、その緻密な読み方で「名作」を未聞の切り口で料理する高田先生のお手並みに驚き、別の作品でその斬新な読解を期待していたことだろう。
事実、前回拝聴したナオさんは今回の講演を聴きながら、「ここで聴いてない人が可哀そうになった」という感想を後でメールしてきてくれたものだ。
いずれ前著『〈名作〉の壁を超えて』(翰林書房)に続いて本になるだろうから、あまり詳しい内容紹介は控えたい。
前回の「網走まで」についての分析に入る前に、高田さんからの挑発として
 * 銀河鉄道は空を飛んでない
 * 坊っちゃんは赤シャツを殴っていない
という断言から始まったが、今回は
 * 「舞姫」の豊太郎は留学命令を受けてない
 * 「野菊の墓」の政夫は、民子の結婚を知ったあと却って成績が上がっている
という我々の盲点を突くところから始まった。
個人的には政夫の件は記憶していた通りだったけれど(つまりは政夫と民子の間に恋愛感情と呼べるほどのものは育ってない)、豊太郎は「留学」したものとばかり思い込んでいたので唖然。
高田さんに言わせれば「海外出張」だったからこそ、大学で受講する際に政府の許可を求めたのだということになる、なるほどナァ〜。


さらに「雪国」に出てくるのは汽車ではなく、電気機関車だったろうと指摘されて驚いたナ。
電気機関車と言っても若い人には分からないだろうけど、短期間ながらこの機関車が利用されていた由。
また「国境」はクニザカイではなくコッキョウと読むべきだと確信を込めて言われると、揺れていた自分の気持が確定された思いだった。
クニザカイという読みを意識していなかった川端自身の発言もあるとのこと。


誰しもが、駒子の方が葉子より年上だと思っていると思うけど、実は決め手はないというのが高田さんの指摘。
印象どおりかもしれないものの、互いの呼称が「駒ちゃん」「葉子さん」というので、両者の年齢の上下は流動的だという。
昔から島村が「小肥り」と設定されているのに違和感を抱いていたけれど、これに関しては「贅沢の表象」と言われて脱力。


「雪国」という言葉がかもし出すイメージ(積雪量)や、テクストでくり返される「笑い」の意味付けは、高田論の核心になるのでここでは書けない。
高田さんは病気のために医者からしばらくの間は禁酒を命じられたため、論文書くしかないので1500枚ほど溜まったと言っているので、つい次ぎを期待してしまう。
しかしヒグラシゼミとしては、高田さんを頼りにしているわけにはいかないと思っていたところ、1月は現役生(学大修士課程)の石川クンが27日(日曜)に発表することになったのでホッとしている。
たぶん樋口一葉だと思うけど、作品は決まりしだいに発表します。