【読む】永井荷風の岩波文庫  多田蔵人『永井荷風』

岩波文庫が入った封筒を落掌したので、相変らず早稲田の皆さん(千葉俊二宗像和重十重田裕一さん達)はガンバッテるなと思って開封したら、大学後輩の多田蔵人さんからで荷風の『花火・来訪者 他十一篇』だった。「花火」は在職中に文学史などで取り上げたこともある重要作品だけど、やっと岩波文庫に収録されたかと喜んだ。解説がこの十数年間低調だった荷風研究のブランクを破り、ハイレベルの荷風論を出版した多田さんだからお買い得(13篇入って700円)。

多田さんが東大出版会から出した荷風論(2017年)は、4200円の定価にしては極めて充実していて、これもお買い得。東大南原繁記念出版賞とはどんな賞だかしらないけど、これを受賞しているから文学以外の分野の人からも評価されているようだ。

目次を見てもらえればその充実ぶりが分かると思うけど、荷風の代表作の論が8本並んでいる。できればこの書を片手に文庫を読んでもらいたいけれど、多田さんの丁寧な解説があるからそれでもダイジョブ。

荷風を読んでないのは恥だヨ!