【読む】和田博文『三越 誕生!』  多田蔵人(編)『荷風追想』

 これも頂戴したばかりで未読ながら、紹介したおきたい。

和田博文『三越 誕生!』(ちくま選書、1600円)

多田蔵人・編『荷風追想』(岩波文庫、1000円)

 今まで本のやり取りをしたことのない和田さんから贈られた時は少々驚いたけれど、調べてみたらボクの方から『シドクⅡ』を贈ったばかりだった(ボケてるネ)。和田さんとは研究の方向が全然異なっているのだけれど、優しい性格で学会でもいつも笑顔で迎えくれたりするものだから、無視できずにお贈りしたようだネ。もちろん方向は違っても、ボクの側からは深く敬意を感じつつ労作『コレクション・モダン都市文化』(ゆまに書房)を研究室に具えるなどしていたのも事実で、後任のヒッキ―先生(疋田雅昭)からも感謝されたものだ。ヒッキ―さんから聞いた話では、和田さんが原稿執筆を依頼した人が、建築のラーメン構造を料理のラーメンと勘違いして原稿を寄せた人がいるとか、ご苦労が偲ばれるコレクションの編集ぶりに頭が下がるばかり。

 コレクション100巻はどれも専門的なテーマばかりだけれど、今度の著書は一般の人々にも開かれた興味深いものなので、広くファミリーの皆さんにも強くおススメしたい。三越を知らない人はいないだろうけれど、その歴史を知る人は少ないのではないだろうか(越後屋として日本史の教科書には載っていたかも)。家族の意向を無視して学大に赴任したバツとして、翌年妻子をヨーロッパ35日旅行に連れ歩いたことがあったけど、観光案内人としての立場だったので自由行動は抑えられていたものだ。パリではありがたいことに三越があった(!)ので、ジャミラは日本語が通じる三越に放置しつつ息子を武器博物館に放牧し、憧れのモロー美術館で数時間貴重な時間を送ることができた。新潟出身のジャミラだけにパリでも三越に行けることを喜んでいたので、自由時間を持てたボクとしては三越さま様だったネ。

 そんな三越を和田さんお得意の《文化》研究の対象として広い視野から紹介しているので、とても楽しく読めるはず。終章を除いて全5章を32項目に分けて解説しているので読みやすく、楽しそうだ。もちろん漱石や独歩など、文学史との接点もかたられているので勉強にもなるヨ。

 

 多田クロード(夫人のチサトが学大卒でボクがクラス担任だった流れで、ダンナにも付けた愛称)の文庫は、文学者中心に荷風について語った70本近くの文章を集めたもの。太宰や三島をはじめ皆さんにも馴染みの作家が語っているから、楽しく荷風について学べる本だネ。テクストを《読む》ことを中心にしているボクとしては、この書で荷風に馴染んでもらってから(最近荷風は忘れられているからネ)、クロードの達成度の高い荷風論を集めた単行本(以前ブログで紹介)にチャレンジしてもらいたいと願っている。とにかくスゴイ奴だヨ。