【状況への失言】北アイルランドの《壁》は必要  イギリスのEU離脱がもたらすテロの再燃? 

歴代のアメリカ大統領の中でも、飛び抜けて品の無い(統治能力も無い)トランプが執着しているメキシコとの《壁》の規模の壮大さには、良かれ悪しかれ圧倒されるばかり。しかし見えない《壁》も含めて世界を《壁》で分断化・二極化しつつ、差異・対立に由来するテロを生み出しているトランプの無恥な凶暴さには、テロのニュースを知るたびに辟易(へきえき)させられる。

しかし北アイルランドとイギリスとの間の《壁》は、吾ながら不可欠のものと納得している。ケルト民族とアングロ・サクソン民族との抗争のみならず、カトリックイギリス国教会との抗争も重なっているので、長い歴史を持つ両国の争いが血なまぐさくなるのは必然なのだろう。だからこそ両者間のテロ合戦による犠牲者を生み出さないためにも、北アイルランドとイギリスとの国境には《壁》が必要となるのだナ。

20世紀も最近になるまで(1970年代?)ロンドン市中の著名な高級デパート(ハロッズ)にIRA(北アイルランド解放戦線)が爆弾テロを仕掛け、多くの犠牲者を出したのを覚えている。昔テレビ番組でIRAに所属しながら、母子の間で対立している不幸な例が紹介されていたけど、母親が急進派で反英闘争の死んだ象徴的存在を英雄視しながら闘争の継続を訴え、息子の方は武装闘争に反対しつつ若いを訴えていた。

 

それが20世紀末には和平が成立したそうだけれど、現実的には両者間に築いた長大な《壁》が平和には不可欠だと納得できたのは、関口友宏の「ヨーロッパ鉄道の旅」という番組のお蔭だった。北アイルランドベルファストだったかの《壁》を夜になってから関口が見に行くと、目の前で出入り口閉じられ厳重に施錠されたのだった。昼は自由に通行できるものの、夜は治安が保障されないので行き来を完全に絶つことにしたら、ようやく平和が訪れたとのこと。関口もボクも納得させられたものの、苦いものが心底に残ったものだ。

イギリスでは離脱推進派が、アイルランドとイギリスとの国境について楽観している(トランプ並みの)新首相を選んだので、ひと事ならず両国間のテロが再燃するのではと、気が気ではない。EU離脱指向の根底には、民族的・宗教的などの《アイデンティティ》(所属意識)の動揺なり希求がわだかまっているので危険極まるのだナ。《アイデンティティ》の希求は排他的になるのが必至だから、危ないものだと心すべし!