【読む・状況への失言】「関東大震災と朝鮮人虐殺」  辻野弥生  森達也  中川五郎

 いま朝日新聞では「関東大震災朝鮮人虐殺」という副題の記事が連載されている。「現場へ!」という欄なのだけど、このところあまり興味を惹かれない特集だったので久しぶりに読んでるヨ。第1・2回とも中川五郎(73歳)の名が出てくるので驚いたけど、昔のフォークシンガーの1人として知っているだけで、実は1曲も知らない。それが虐殺された側からの抗議を歌い込んだ曲を、今でも創り続けているのだからエライ! 第2回では朝鮮人と間違われて被差別部落の行商人9人(幼児や妊婦を含む)が惨殺された事件を知った映画監督の森達也が本に書き、それを読んだ中川が歌にしたのだという。

 関係者が口を鎖している中で事件を掘り起こしたのは辻野弥生という人であり、「福田村事件 関東大震災・知られざる悲劇」(1982年)という著書にまとめたものを元に森監督が映画化して今年9月から公開されるという。辻野さんの本も6月末に五月書房から再刊されるそうでだけれど、映画では著書には無い言葉が付け加えられたそうだ。

 《日本人だろうと朝鮮人だろうと、部落の人だろうと、殺していい命などあろうはずはないからです。》

 まことに当たり前のメッセージではあるものの、大震災のどさくさ紛れに殺したのが警察官のみならず自警団に属したフツーの庶民だったのであり、だからこそ口を鎖して事件を無かったものにしてきたという事実は、改めて確認しておかなければまたくり返されるだろう。もちろん朝鮮人に対する中傷・差別を声高に叫ばずにはいられない低能下劣な日本人たちを、恥と思う感覚を保持し続けなくてはまた虐殺に加担することになるから要注意だネ。