「それから」を教材に!

今、朝日新聞では漱石が連載していた頃を再現する体で、毎日昔ながらに1回分ずつ掲載している。
漱石作品では一番よくできている作品であり、もっとも好きな作品で論文も拙著『シドク――漱石から太宰まで』に収録したほど。
その前は「こころ」だったし、今月21日からは「門」に切り替えるそうだ。
「それから」は細部までよく覚えているせいもあるけど、今さら毎日小まめに読む気は起らない。
好きだからというより、実によく書けている作品なので教科書に収録したらどうかと桐原の編集会議で主張することがあるけれど、「こころ」を載せないと売れないからといつも却下されてしまう。
現場の教員は予習が大変なので、新しい教材は歓迎されないというのが1つの理由らしい。
乃木夫妻も含めれば4人もの自殺が語られる辛気臭い「こころ」などよりは、血が滲むような男女のもつれを描いた「それから」の方が今どきの高校生にはハマっていると思うのだけれど。
ボクが定時制高校の教員だった時には(上野忍岡で7年間)「それから」が載っていた教科書があって(確か江藤淳が編集顧問?をしていた東書)、生徒の反応はとても良かった。
桐原は載せる可能性が無いので、どこでもいいから教科書に収録してもらいたいものだ。
そして意欲ある教員が生徒に読ませてくれることを期待している。